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「庶民のスポーツカー」の金字塔! 「ゴルフ初代GTI」が想定外のヒットを飛ばした理由とは

FFハッチバックの存在を強烈に印象づけた「初代ゴルフ」

 意外にも、FFハッチバックに最初にトライしたモデルは初代ホンダ・シビックだった。シビックは、各自動車メーカーからベンチマークとして研究されていたともいうが、世界中にFFハッチバックの存在を強烈に印象付けたのは初代フォルクスワーゲン(VW)ゴルフだった。 大型のリヤハッチゲートを持つ2BOXカーの発想は、人員の移動、手荷物の収納と多目的に自動車を使うことができた。また3BOXカーのトランク部分を切り落としたデザインは車両のコンパクト化につながり、若年ユーザー層、都市生活型ユーザー層から注目されることになり、ほどなくして小型車の標準的な形態として定着することになる。もちろん、イタルデザイン、ジョルジェット・ジウジアーロによるシンプルで端正なデザインが、商品力を引き上げていたことも紛れもない事実である。
 FF2BOXは、実用性に優れたコミューター的な性格が強く、市場もそうした利便性の高い車両と認識していたが、この常識を覆すモデルが登場した。仕掛けたのは、ほかでもないFF2BOXを普及させた張本人、VWだった。

実用車の領域をはるかに超えた高性能「GTI」誕生

 世界的に国民車として受け入れられてきたビートルに代わり、その後を引き継ぐかたちでデビューしたゴルフだったが、1976年、ゴルフのスポーツグレードとしてGTIを登場させた。基本が実用性の強いモデルでも、スポーツ色を取り入れれば新たなユーザー層を獲得することができるだろう、という商品企画がその背景にあった。
 インジェクションを意味するIとGTを組み合わせてGTI。1588ccのSOHCエンジンに機械式燃料噴射装置のボッシュKジェトロニックを装着して110psを発生。同じ標準型ゴルフの1.6Lエンジン(キャブレター仕様)が75psだったことを考えれば、格違いの高出力、高性能エンジンだったことがうかがえる。また、1976年当時、燃料供給系に燃料噴射装置を使うことはまだ特殊な例(Kジェトロ装着例でいえばポルシェ911)で、逆に言えば、ゴルフGTIにかけるVWの思い入れ、本気度が伝わってくる仕様だった。

軽量なボディを生かした鮮烈な乗り味

 軽いゴルフの車体(820kg)に110psエンジンの組み合わせは、誰がどう考えても遅かろうはずもない。パワー・ウエイト・レシオは7.45kg/psと実用車の領域をはるかに超えるレベルにあった。さらに、もともと中速トルクが厚いVWのエンジン特性に加え、ピークパワーが上乗せされたことでその走りは俊敏、鮮烈なものに仕上がっていた。
 一方、価格設定が1万3850マルク(1976年末邦貨換算レートで約166万円)と思いのほか低めとなったことで、価格面でも同クラスのライバル車(厳密にはFFホットハッチは皆無だが)より有利な条件となり、メーカーの思惑を越えるヒット作となった。ちなみにゴルフ1は、総計678万台が生産され、そのうち46万台がGTIだったという。ゴルフは後継モデルも順調に売れ、現在にいたる累計生産台数は2019年に3500万台を超え、世界のベストセラー、ロングセラーモデルとなっている。

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