EV充電器は車いすユーザーのことを考慮していないのではないか
EVシフトで、世界中で電動化が加速するという報道もあちこちで見られ、実際にBEVをはじめとする電動車が増えつつある。必ずしも電動車両だけの世界になるとは断言できないが、それでも今よりも数多くの電動車両が世界にあふれる、そんな時代が到来するのも近いと言える。
そんな環境が大きく変わっていく中で、では現在のEV環境は人にやさしい設計となっているのか? そういう視点でEVライフを見てみることとした。というのも、車いすレーサーの青木拓磨選手から「EV充電器環境は、車いすユーザーをまったく考えていない」と問題提起があったからだ。
写真に登場する都内各所の充電スポットはたまたま立ち寄ったため撮影したが、当該場所だけが問題があるというわけではなく、現状の充電環境はどこも似たり寄ったりの状況である。
ここがダメ!その1:「駐車場の三角コーン」
充電スペースの問題は、まず駐車する前から発生する。高速道路上のサービスエリアなどでは最近は見かけなくなったが、EV専用ということで敢えて三角コーンをおいて一般車両が駐車しないよう注意喚起をしているところも多い。しかしこの三角コーンが邪魔をする。これはいわゆる一般の障がい者優先スペースでもよくある話で、近くに警備員などを配置していれば声をかけてどかしてもらうことも可能だが、必ずしもそういった場所ばかりではない。
ここがダメ!その2:「充電器の操作性」
また、青木選手によると「(車いすユーザーにとって)充電器に近づくのはひと苦労」だという。現在、多くの急速充電器がアイランドタイプで、路面よりも一段高いところに設置されているのだ。ひどいところでは、さらに充電器の周囲に頑丈なガードバーが設置されているところもある。近づけない上に位置が高すぎて、充電器の操作をわざと邪魔されているのではないか? と思ってしまうほどである。「充電プラグをフックから取り上げるのも、充電を指示する操作パネルにもたどり着けないところも多々ある」とは青木選手。
ここがダメ!その3:「充電口と充電器の相性」
また、充電スロットのレイアウトはさまざま。場所によって状況が変わる上に車両の充電口のレイアウトによっては大問題に発展する。基本的に急速充電器側に充電口を寄せて停めるわけだが、急速充電口が乗降側にあれば自身の乗降用にそれなりにスペースを開けているので問題はない。しかし、充電口が反対の助手席側にあると、乗降用のスペース確保はもちろん、充電プラグを指すために車いすで動く動線も確保しなければならないのだ。車両の前部に充電口がある場合も、車止めが設置されていたりすると、車いすの導線を確保するために車両を少し離して停めても車止めが邪魔になって車両前部に行けないということもあるようだ。
まとめ:設置することを優先しているのはわかるが問題は山積
実際に街の急速充電器を見てみると、とりあえず設置することを最優先していて、まだまだユーザー視点で設置されていないことに気が付くはずだ。これは車いすユーザーに優しくないイコール高齢者にも優しくないのである。この問題を「どこに言えばいいのだろうか?」と青木選手は訴える。カーメーカー、充電器メーカー、そして設置者と設置業者、さらには国交省や経産省と一緒に考えていかねばならない問題、なのだろう。EVの本格普及を前に、この問題が早く解決することを期待したい。