吉田稔さんが希少な1台を手に入れるまで
「夢のようです。わたしが幻のGT-RといわれたBNR32 S&Sリミテッドバージョンのオーナーになれるとは思ってもいませんでした。実は受け付け開始日にウェブにアクセスしたのですが、繋がらなかったのです。縁がないクルマなんだな、と諦めていました」
幸運にも希少なBNR32 S&Sリミテッドバージョンの1台を手に入れた吉田稔さんは、開口一番、運命の出会いを語り始めた。ある専門職を生業とする吉田稔さんは、子供のときからクルマが大好きだった。スーパーカー世代の少年で、そのころ家にあったのは5代目スカイライン(ジャパン)だ。だからスカイラインに関しては多くのエピソードがある。
小学2年生になった春、大好きなスカイラインにターボ搭載車が加わった。そのときの興奮を、吉田さんは当時の日記に記している(今も保管)。これに続く6代目スカイラインではDOHC4バルブエンジンを積む「RS」の高性能ぶりに度肝を抜かれたという。
「小学校3年生のとき、発表されたばかりのスカイラインRSを見に、最寄りのディーラーに行きました。そこで初代GT-Rのレースシーンを収録したビデオも見たんです。ブレーキが白煙を噴き上げているシーンが強く印象に残っていますね。この瞬間、GT-Rのすごさに感動し虜になってしまったのです」
自動車雑誌を読みスカイラインに憧れた
高校生のとき、自動車専門誌にBNR32のスクープ記事が載る。「GT-R復活」の文字が躍るのを見て、吉田さんは狂喜乱舞した。これ以降、寝ても覚めてもGT-Rを恋い焦がれる日々が続く。が、若者にとってGT-Rは高嶺の花だった。吉田さんが最初に手に入れたクルマはR32スカイラインのGTSタイプSである。死にものぐるいでバイトに励み、19歳のとき新車で購入した。その後、このスカイラインと10年、18万7000㎞を共にした。愛情は冷めていなかったが、気がつけば度重なる改造によってボディなどがヤレ、バランスも崩れて維持するのが難しくなっていた。
「GTSに乗っている間もずっとGT-Rには憧れていましたが、なかなかいい個体に出会えませんでした。そんな折り、2003年に走行50kmほどのBNR32 S&Sリミテッドバージョンが某中古車店のサイトに出ているのを発見したのです。チャンスが巡ってきたと思いました」