タイミングチェーンは交換不要
こうしたトラブルを避けるために、一時廃れた金属製のタイミングチェーン(ローラーチェーン)が見直され、1990年代後半以降はタイミングチェーンを採用するエンジンが増えた。今日では切れる心配がほとんどなく、基本的に無交換でOKな金属性のタイミングチェーンのほうがむしろ主流になってきている。
もちろん、かつてのチェーンのままではなく、チェーンのコマの小型化が工夫され、静粛性も優れたサイレントチェーンが開発されたことが普及に大きく貢献している。
とくに軽自動車は、日常的に低回転から高回転まで全回転域を使って走行する機会が多いので、タイミングチェーンを積極的に採用する傾向だ。
タイミングベルトの交換時期の目安は?
前述の通り、タイミングベルトが切れてしまうと、クルマは不動になり、エンジンもブロー。修理費が非常に高くつくので、自動車メーカーはタイミングベルトが切れる前に交換することをすすめている。詳しくは、各車ごとの取扱説明書に書かれているが、国産車の場合、ほとんどクルマのタイミングベルトの交換時期は10年10万kmがひとつの目安になっている。
自動車メーカーが指定する交換時期にはかなり余裕があるはずなので、通常は10万km以内にタイミングベルトが切れてしまうようなことはほとんどない。年間の走行距離が1万km以内の人ならば、新車から4回目の車検、9年9万kmのときにタイミングベルトを交換しておけば安心だ。
また中古車を購入し交換時期などがわからないという人は、一度整備工場で点検してもらうといいだろう。タイミングベルトカバーを外し、ベルトの張り具合や表面の劣化、クラックの有無、ベルトの歯の状態などをチェックしてもらえば、およその寿命やコンディションはわかるはず。そして、音のチェックもけっこう重要な要素といえる。
タイミングベルトそのものは10万km走ったとしても切れないケースが多いのだが、ベルト本体ではなく、タイミングベルトのテンショナーベアリングが破損してしまったり、焼き付いてしまったりというケースは意外に多い。
こうしたベアリング破損があってもベルトが切れてしまったときと同じように、バルブタイミングのずれから、バルブとピストンの干渉やバルブクラッシュが生じ、エンジンのオーバーホールが必要になることが少なくないのだ。
こうしたテンショナーベアリングが劣化してくると、ベアリング本体から異音が出たり、ベルトの張りが甘くなって、ベルトが滑ってキュルキュルと音が出ることがある。5万kmを越えたらときどきボンネットを開けてエンジンルームを覗き、タイミングベルト付近から異音が聞こえてこないかをチェックするようにするといいだろう。
逆にいえば、ドライバーのフィーリングだけでタイミングベルトが切れる予兆をキャッチするのはほとんど不可能……。
というわけで10万kmが近づいて来たら、タイミングベルトカバーを外してプロに目視点検してもらうか、距離で判断して早めに交換してしまうのが一番無難だといえるだろう。