社外ステアリングに交換するときの着眼点と注意点
市販車の純正ステアリングからスポーティでスタイリッシュなデザインのステアリング、例えばMOMOやナルディなどに交換するのは、クルマイジりにおける定番のひとつと言えるだろう。さらには、カーカスタムのはじめの一歩として「まずはステアリングを変えたい」というエントリーユーザーも多いはず。
そこで今回は、あらためてステアリングとはどんな役割を果たしているのか? また、ステアリングを交換するメリットやデメリット、交換するときの注意点などについて解説していこう。
■ステアリングとは? 役割は?
自動車でも自転車でも、進むべき方向に向かってタイヤを左右に切る、舵取り装置のことを一般にはハンドルというが、自動車の多くに採用されている、輪っかのカタチをしたリング状(環状)のハンドルのことを、“ステアリングホイール”という。口頭ではたいてい「ホイール」が省略されて、『ステアリング』と呼ぶことが多いようだ。
ただし、『ステアリング』という場合には、ステアリングホイールを回転させてタイヤの向きを左右に変えるための機構全体を指すこともあるので、MOMOやナルディなどに代表されるようなアフターパーツとしての交換式ステアリングのことをいう場合には、やはり“ステアリングホイール”とフルネームで呼ぶほうが正解かもしれない。 ステアリングホイールは、手で握るグリップ(ホイール)部分とスポーク部分で構成されている。そのなかには、グリップ部分が本革やウッドになっているもの、さらには外径や太さの違いがあったり、3本スポークや4本スポークなどの形状の違いなど、じつにさまざまなデザインが存在している。
最近の純正ステアリングホイールには、センターにエアバッグが内蔵されているのはもちろん、スポーク部分にオーディオ操作や電話に出たり切ったりするハンズフリースイッチが装備されていたりと、ますます高機能化が進み、デザインに優れたものも多くなってきている。
■市販車ではどのくらいの外径が相場?
あとで述べるステアリングを交換するメリット・デメリットにも大きく関連するポイントになってくるのがステアリングの“外径”である。外径とはすなわちステアリングの大きさであり直径のこと。これは、φ(ファイ)という単位で表されることが多く、例えば「350φ」というステアリングは、直径が350mmであることを意味する。
一般的な乗用車の純正ステアリングを基準として考えるならば、最近では370φ〜400φというサイズが多く採用されているようだ。自動車メーカーとしては、安全を最優先した上、どのようなシチュエーションにおいても、万人に向けて扱いやすいようにと割り出された平均値(相場)ということになるだろう。
そのシチュエーションとは、多用する一般的な道路、街中の狭い路地、ワインディング、高速道路、そして車庫入れなどといったありとあらゆる場面が想定されているのはご想像の通りだ。
それに対して、交換式ステアリングのMOMOやナルディは、純正ステアリングに比べて小径な360φ以下のサイズがほとんどで、なかには競技用として260φや250φなどの極めて小径なステアリングも存在する。260φや250φは極端な例にはなるが、レーシングカーなどで採用されるサイズになっており、超小径ステアリングは一般的な乗用車には不向きだと言われている。その理由については、以下のメリット・デメリットの項目で詳しく触れて行くことにする。
■ステアリング交換のメリット
メリット1:見た目がスポーティでカッコイイ
常に運転手の目の前にあり、手に触れているのがステアリングホイール。走り屋サンだけではなく、カッコいいステアリングホイールは何倍増しにもテンションがあがるというもの。クルマ好きに言わせれば、フルエアロやペイントでいくら外観をカッコよく仕上げてもステアリングホイールが純正のままだと、コダワリ度数は一気に激減。
その逆に、見た目は純正でも一点豪華主義でMOMOやナルディの4〜5万円もするようなステアリングホイールが装着されていれば、タダモノではないオーラがプンプンと漂ってくる。スポーツステアリングと言えばブラックレザーのグリップにブラックやシルバーのスポークカラーが基調だが、ウッドステアリングのほかにも、グリップにロゴ刺繍が施されているものや、レザーがレッドやブルーのもの、スポークがクロームメッキになっているタイプなど、たくさんの種類がラインアップされている。インテリアカラーや質感とステアリングをマッチさせれば、ドレスアップ効果も大いに期待できる。
メリット2:レスポンスがクイックになる
サーキットを走るレーシングカーを例にとると、ステアリングホイールは300φを切るどころか250φ前後になっているなど極端に小径になっている。これは、ハイスピードに対応するために、少しのステアリング操作で素早くフロントタイヤの向きが変えられるようになっているからだ。
コーナーでスピンすると思いきや、超人的なステアリングさばきで一瞬にして挙動を安定させることができるのは、超小径ステアリングも含めたレーシングカーの高い運動性能のおかげである。大きなステアリングをぐるぐるとまわしていては、速いスピードに追いつけないというワケだ。
乗用車では、そこまでストイックさを求める必要は当然ないが、純正ステアリングの400φから360φ〜350φといった外径の交換式ステアリングにするだけでも、十分に体感できるくらいレスポンスがクイックになる。握りこぶし1個とか1個半の違いでも、かなりシャープな切れ味に改善される。
メリット3:手に馴染んで操作性があがる
手のひら全体で、ステアリングをギュッと強く握りしめて運転するのは、手首が固くなり余計な力が入ってしまうのであまりよろしくない。イザというときにも、手首が固まっているとスムーズで素早いステアリング操作ができなくなってしまうからだ。
ひと昔前によく見られた営業車の無骨でグレーなウレタンステアリングを想像してほしい。それらはグリップが細いケースが多く、手のひらとステアリングホイールの間に隙間ができてしまい、どうしても強く握ってしまう傾向にある。強く握ると手のひらは汗ばみがち。するとツルツルとすべり運転に集中できなくなる。
だが、いわゆるスポーツステアリングはコストよりも人間工学重視で設計されていて適度にグリップが太い。手に馴染みやすくて滑りにくいレザーが使われフィット感が格段に良くなるのが特徴。グリップが太ければ良いというものではなく“適度”というのが肝心。純正より小径でも力むことなくホールドできるので、それらのシナジーにより操作性がアップするのは間違いないだろう。
■ステアリング交換のデメリット
デメリット1:ステアリングが重くなる
純正よりも小径のステアリングに交換した場合は、運転手の感覚として、ステアリングをまわす操作が重たく感じることがある。てこの原理が弱まるからだ。特に車庫入れ時などステアリングを右に左に切り返すときなどは、男性に比べて腕力の弱い女性にとってはかなりの負担になる可能性がある。
狭い路地にて障害物を避けながら低速で運転する場合も同様だろう。力を入れやすい体勢を求め、ドライビングポジションがそれまでと変わってしまうのもデメリットになる場合もあるかもしれない。
デメリット2:ステアリングを切り過ぎがちになる
小径ステアリングにすることでクイックになるメリットがある反面、純正ステアリングと比べて少しのステアリング操作で大きくタイヤの向きが変わってしまうので、ハンドリングがシビアになったり、思いのほか切り過ぎがちになってしまうことがあるようだ。
もちろん運転手の好みによるところもあるが、高速道路を走行するときなどはステアリング操作に神経を集中する必要があるため、長時間の運転では疲れやすくなるだろう。超小径ステアリングになればなおさらで、一般的な乗用車ではメリットは限られてくる。
デメリット3:ハンズフリースイッチがなくなる
完全な社外ステアリングに交換すると、同時にオーディオ操作や電話の通話機能といった純正ステアリングに装備されるハンズフリースイッチがなくなってしまうのは少しもったいない点。まれにハンズフリースイッチ移設キットなどが車種によってはリリースされている場合もあるが、当然すべての車種がカバーできているとは言えないようだ。
■ステアリング交換をする際の注意点
エアバッグ装着車は選択肢が狭まる
ステアリングを交換したいけれど、エアバッグの機能はそのまま残したいという人は少なくない。そんな場合は交換できるステアリングの選択肢の自由度は狭まってしまうので、「こんなはずじゃなかった」と後悔しないように心の整理はしておきたい。
だが、選択肢は狭くなるものの、自動車メーカーが純正オプションとして用意しているMOMOなどのようなブランドのステアリングに交換する方法もある。さらには、いわゆる純正形状ながら、グリップ部分が銃の握り手のようなカタチになったガングリップタイプや、カーボン柄やピアノブラック、ウッドのほか、レザーとそれらを組み合わせたコンビタイプといった社外品も各アフターパーツメーカーから数多くリリースされている。
純正タイプの社外品は、グリップやベースフレーム部分のみを交換し、エアバッグなどはもとの純正を流用するケースがほとんどである。エアバッグ装着車については、むしろコッチのほうを主流に考えているアフターパーツメーカーも多い。
交換作業は信頼できるプロに任せよう
慣れた人ならDIYで交換できる作業内容になるのだが、ステアリングの交換は、車検にも関わってくることなので、自信がない人は信頼できるプロに任せたほうがいい。完全社外品のステアリングに交換する場合は、ステアリングを車体に取り付ける『ボス』と呼ばれるアダプターを追加する必要がある。
ボスは車種ごとに専用品が必要で、MOMOやナルディなどステアリングメーカーによっても適合を調べる必要がある。また、エアバッグを外すとメーター内の警告灯が点灯したり点滅したりするが、警告灯がついた状態では車検はNG。
この対策として警告灯キャンセラーなどを配線する必要もあったりするので、まったくの素人にはやや面倒なことも多い。それからホーンボタンには「ラッパのマーク」がないと、これも車検には通らない。そもそもの話として、クルマの電気系に理解がないと交換作業中にエアバッグが誤作動し、破裂してしまうなどの恐れもある。
ステアリングを交換しても任意保険はそのままでOK
ステアリングホイールを交換する際に盲点になりがちなのが、エアバッグ機能を外したときの任意保険のこと。上述したとおり、エアバッグ機能を活かしたまま、純正オプション品のMOMOステアリングに交換したり、純正タイプの社外品に交換する場合は問題ない。
とある保険会社に確認したところによると「昔はエアバッグ割引というのが存在し、取り外した際に報告を保険会社にする必要がありましたが、現在はその割引そのものが存在しないため連絡は不要となっております」と言うのだ。
なお、エアバッグを取り外して万が一交通事故などに遭った場合について尋ねてみたところ、「補償は変わらず適用されます」というが、保険会社や代理店によって対応が異なる場合があるため、任意保険の契約内容については1度確認をしたほうが間違いないだろう。
■まとめ
純正ステアリングから、MOMOやナルディなど海外製の有名ブランド品に交換するのは、誰にでも手をつけやすいカスタムではある。だが、近年多くの車両にはステアリングにエアバッグが標準装備されているので、交換時の注意や車検のことなども含めて、ある程度の知識は必要になってくる。ステアリングホイールはあくまでもクルマにとっての重要部品のひとつであることも覚えておくといいだろう。