ピーカンの日もじつは洗車指数は最低
筆者は自宅の水道からホースを引っ張ってきて洗車する手洗い派だ。もっとも気になるのは当日の天気。もちろん、雨が降っていたり、降りそうだったらあきらめる。が、逆にピーカンにも憂鬱な気分にさせられる。
その昔、某メーカーの新車のテレビCMで、よく晴れた青空の下でファミリーが洗車しているシーンを「楽しそう」などとと微笑ましく眺めていたが、考えてみればとんでもない愚行だ。
水滴が瞬時に蒸発する強い日差し、焼けたボディ
文字どおりクルマ全体に水を撒布しながら洗うのが“洗車”。ここで問題になるのが太陽の光だ。日差しを遮るガレージやカーポートに置いているならまだいい。厳しいのは月極駐車場など屋外に停めているケースだ。
直射日光を受けたボディは熱を帯び、真夏には表面温度が水の沸点と同じ約100度にも達するという。塗装面がチンチンに熱を帯びた状態でいきなり水をかけたらどうなるか? 考えるまでもない。一瞬で水は蒸発し、アッという間に塗装面にのったチリやホコリ、汚れなどとともに焼き付いてしまうだろう。“水ジミ”とか“ウォータースポット”などと呼ばれる非常にガンコで厄介な汚れだ。
それを除去するための専用のケミカル用品もあるようだが、そもそもスポンジやウエスなどでこする行為が塗装に微細なキズを刻み、研磨成分を含んだケミカル剤の場合、せっかく施工されているコーティングの皮膜を剥離してしまうこともある。
エンジンを止めた直後のボンネットが熱を帯びている状態ならなおさらのこと。水を撒布する前に日陰などでボディをよく冷まし、手のひらで触ってみて過度に熱さを感じない温度(40℃程度)まで下げる必要がある。
太陽光を集めやすい濃色車は要注意
ここではボディカラーも塗装の表面温度に大きく影響する。淡色より濃色のほうが日差しの熱を吸収しやすく、例えば黒い塗装と白い塗装を比較した場合、表面温度は黒いクルマのほうが1割ほど高くなるという。
さらに、ボンネットやルーフにのった水滴が虫メガネのように作用し、太陽光を1点に集めて水滴自体を焼き付かせてしまうトラブルも集光力の高い濃色車のほうが生じやすい。黒はいうまでもなく、紺、赤、濃緑といった塗装色は、とくに慎重さが求められるということだ。
洗車にもっとも適した天気はじつは「曇天」。晴れていたら「日陰」での作業が必須。日陰でも部分的にボディに日差しが当たってしまう場合は、その箇所に残っている水滴を優先的に、素早く除去したほうがいい。まったく日陰が期待できない場所なら、いっそ洗車しないほうが塗装にダメージを与えずにすむ。
例えば、晴れた日でも太陽が昇りきっていない早朝や、陽の沈む前の夕刻ならボディが冷えているうえ、日差しも柔らかく、水ジミやウォータースポットを生じにくい。
ホワイトやシルバー、イエローといった淡色車は、濃色車と比較すればたしかに日差しによる影響は少ないのかもしれない。が、単にその度合いが低く、色合い的に目立ちにくいというだけ。水ジミやウォータースポットと無縁ではない。
ヤスリをかけているのに等しい強風下の洗車
なお、淡色車でもフロントグリルや、最近はホイールやドアミラー、ピラー、エアロパーツなどに黒い塗装を施したモデルが少なくなく、放置した水滴を日差しで焼き付かせてしまうこともある。ボディ(塗装面)は後回しにして、できるだけ早い水滴の除去を心がけるべきだろう。
ちなみに、天候面で洗車の妨げになるのは日差しだけでなく、曇天・晴天にかかわらず吹く“風”も大敵だ。「濡れたボディが早く乾いていい」などとノンキなことをいっていられない。そよ風程度ならさほど影響ないが、強風ではチリやホコリなどが塗装面に大量に付着する。その状態でむやみにスクラビング(こすること)や拭き上げを行なうのは、いわばヤスリをかけているのに等しい行為だ。
よく晴れた日も、風の強い時も洗車にとっては最悪のコンディション。汚れを落とすつもりが塗装にダメージを与えてしまったら本末転倒だ。