洗車の基本:カーシャンプーの選び方
クルマは常に劣悪な環境にある。ボディやウインドウにはチリやホコリのほか、煤煙、虫、樹液、そして雨が降れば道路の泥水などが付着する。お風呂で石鹸を使って身体を洗い、髪の毛をシャンプーするのと同じ。洗浄効果を高める「カーシャンプー」は、洗車で適宜活用したいケミカルのひとつだ。もっとも、数あるカーシャンプーの中から何を選べばいいのか悩ましい。
愛車の塗装に適した「洗剤」を選ぼう
セオリーとして、まず塗装に適したタイプを選ぶようにしたい。基本的に濃色車用と、ホワイト/淡色車用の2タイプに大別されるが、いずれも洗浄能力は同一で、違いは主に研磨成分の有無。
ホワイトをはじめ、黄色や水色などの淡色系は黒ずんだ水アカや水ジミが際立つ反面、多少の擦り傷は気にならない。だったら研磨成分でそれらを削り取ればいい。対して黒や紺、赤、濃緑といった濃色系は、水アカ/シミは目立ちにくいかもしれないが、スリ傷が目立ってしまうので研磨は避けたい。
では、ホワイト/淡色系は、必ず研磨成分を配合したシャンプーでなければいけないかといえば、それは違う。過度の水アカなどがなければ、わざわざ研磨傷をつける必要はない。また、コーティングを施したクルマの場合、研磨成分で表面のコーティング被膜が剥離してしまう恐れがある。
濃色車にホワイト/淡色車用を使うのは論外だが、ホワイト/淡色車は、汚れの程度やコーティングの有無に応じて、あえて濃色車用を使うのも悪くない。
最近はコーティング施工車専用のシャンプーも選べる。とくに濃色車はこうした商品が安全で、洗浄効果も期待できるはずだ。
カーシャンプーの意外な効能「耐擦傷効果」と傷つけない洗い方
カーシャンプーは耐擦傷(さっしょう)効果が期待できる点もメリットだ。塗装面にスリ傷の原因となる砂粒などが付着していても、シャンプーの泡が包み込んでくれるため、塗装面にそれらの異物が押し付けられる度合いが軽減され、スリ傷を抑えることが可能(ホワイト/淡色車用の研磨成分は除く)。
ここでは塗装面をスクラビング(こする)の際のアイテムも大事。こだわりたいところだが、プロでもグローブタイプの布製モップや、化学繊維製のソフトクロス、羊毛100%のムートン、スポンジなど、使用しているアイテムは種々雑多。絶対的な正解はない。あえていうなら、塗装面へのタッチが極力優しく、泡立ちを妨げないもの。
ちなみに筆者は、食器洗いにならって使い込んでクタクタになった大判のスポンジを愛用している。いろいろ試して、使い勝手がよく、自分のフィーリングに合ったものを探してほしい。
不十分なすすぎ洗いは「シミ」「サビ」の原因に
どんなに塗装に適していて高品質なカーシャンプーも、使い方が誤っていたら効果が得られないばかりか、予期しない弊害を生むこともある。大事なのは希釈(きしゃく)率。つまり、シャンプーの原液をどの程度薄めるかということ。製品の容器には推奨の希釈率が記されているはずだが、勝手に「濃いほうがいいだろう」と考える人がいる。
それだけではない。不十分なすすぎで塗装面に残ったシャンプー成分はいずれシミなどの原因に。さらに言えば、ドアの内部など、ふだん目の届かない(塗膜の薄い)部分に残留したシャンプー成分がサビ=酸化を呼ぶ可能性もある。
ここまでカーシャンプーの有用性について解説したが『過ぎたるは及ばざるがごとし』。シャンプー成分がクルマに与える影響はまったくゼロではなく、シャンプーを併用した洗車では多くの水を使い、汚水も大量に排出する。さらに、数多あるシャンプーの中には環境に好ましくない性質だったり、成分を含んでいるものもある。