慣れを必要とする映像による視界確認が高齢者にとっては不安な面も……【ホンダe】
ホンダｅは後輪駆動を採用したことにより、最小回転半径が軽自動車並みに小さい。市街地での運転で想像以上に楽に曲がることができる。大回りして対向車と接触しそうになったり、壁にこすりそうになったりする不安が少なくなり安心だ。またその感覚に違和感はない。
最新の装備が数々搭載されているのも特徴といえるが、気になるのは後方確認をするドアミラーの代わりに、カメラ映像を利用する方式が標準装備になっている点だ。国産車ではすでにレクサスESでも採用例があり、輸入車ではEVのアウディe-tronが標準装備する。
まだ以上の3例であるので開発途上の装備といえるが、ルームミラーのカメラ映像と同様に、後方の様子をカメラ画像で見るため、後続車などの存在はより鮮明に確認できるものの、迫りくる速度感覚などには慣れが必要だ。遠近の焦点を合わせにくくなる高齢者では、後続車の速さを認識するまでに時間を要する場合がある。じっと画面を見てしまい、前方不注意となりかねない。
それでも私と同世代のモータージャーナリストがホンダeを所有し、時間とともに見慣れてくるとの話だが、高速道路のインターチェンジなどで、高低差のある坂道から本線へ合流していくような場面では、本線上の車両の存在や、その速度感覚がよけい掴みにくいのは実感するといっている。ほかにも日差しの関係で、路面と景色との陰影が明瞭さを損なう場合もあるようだ。
より広い範囲に後方確認できる意味は大きい。だが、高齢者の目の適応力によっては注意が必要かもしれない。
あえてエンジン車に寄せた操作感EVらしくない？【マツダMX-30 EV】
マツダMX-30は、SUVタイプ（スポーツ多目的車）のEVだ。これもEVの機能と直接関係ないが、最低地上高がより高いSUVは、高齢者にとっては乗降性が悪くなる可能性がある。乗るときはもちろん、降りる際に地面に足がすぐ着きにくく、勢いをつけて飛び降りるような形になるかもしれない。
またMX-30はエンジン車での運転に近い走行感覚を特徴とするため、EVらしく回生を活かした速度調節や、回生による減速～停止といった操作が十分には機能しない。回生の強弱もハンドル裏のパドルシフトを使って、エンジン車の変速機をシフトアップ＆ダウンさせるような操作で使うため、運転操作を簡略化できるEVのような運転にはそぐわない。
ただし、それを負の側面と見るか、あるいは従来のエンジン車と同じ操作で運転できると見るか、そこは判断の分かれるところだ。
それでもEVを選ぶ理由は、排出ガスゼロという環境性能だけでなく、モーター駆動を活かした、より簡便で安全かつ快適なクルマの利用という幅広い魅力があり、その視点からするとやや肩透かしを覚えさせる走行特性だ。
