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ケチった結果が大惨事に? サーキット走行に適した「ブレーキフルード」の選び方

限界走行で重要な「ブレーキフルード」の選び方

 サーキットを走るうえで絶対に強化が必要な部分。それは聞くまでもなくブレーキだ。パッドやローターなど部品は多々あるが、力を伝達するフルードも忘れちゃいけない。サーキット走行に適した製品の選び方を考えよう。

そもそもブレーキフルードの役割とは?

 まずはブレーキフルードの役割を手短におさらい。ドライバーがペダルを踏んだときに発生する制動力は、ブレーキフルードを介してキャリパーへと伝達され、ピストンを動かしてパッドをローターに押し付ける。その摩擦によってクルマが減速する仕組みだ。 しかしフルードにもいろいろな種類がある。サーキットを走る人であれば、DOT規格なる言葉を知っているはず。DOTとはアメリカ合衆国の運輸省(United States Department of Transportation)が定める基準で、カンタンにいえば沸点の違いによって分類されている。もっともオーソドックスな製品はD0T3で、ドライ沸点が205℃以上でウェット沸点が140℃以上。対してサーキット用のスタンダードであるDOT4は、ドライ沸点が230℃以上でウェット沸点が155℃以上、さらに上のDOT5はドライ沸点が260℃以上でウェット沸点が180℃以上と、DOT3に比べ50℃近くの開きがあるというワケだ。

絶対に回避したい「ベーパーロック現象」とは

 では何故高い沸点が求められるのか。車重や走り方によって多少の差はあるものの、サーキット走行中のブレーキパッドは300℃を超えることも珍しくない。その熱がブレーキフルードに伝わって沸騰し、発生した気泡によって起きるのがベーパーロック現象。ブレーキペダルをいくら踏んでもフワフワした感触で、減速しないのはドライバーとして恐怖でしかない。 それを防ぐために有効な手段がDOT4やDOT5といった規格のフルードなのだ。サーキットに限らずジムカーナなどスポーツ走行をたしなむ人や、ハイパワーだったり重量級のクルマであれば、最低でもDOT4を使うことをオススメする。なおブレーキフルードの規格はDOTだけとは限らず、日本のJIS規格に準拠したアイテムもある。それらはBF-3やBF-4やBF-5と表記されており、DOTと同じく数字が大きいほど高性能と考えていい。

レース用フルードと同等の沸点とロングライフを両立した「DOT5.1」

 それと近年になってよく耳にするのが、DOT5.1という小数点が付いた規格。コレは従来のDOT5における弱点だった吸湿性の高さ、つまり劣化の早さを大きく改善した製品のことを指す。 DOT5はシリコンでDOT5.1を含む他グレードはグリコールと主成分が異なり、レース用フルードと同等の沸点とロングライフを両立させ、性能/寿命/価格のバランスを重視した規格といえる。純正からアップグレードするときの指針としては、街乗りがメインでたまにサーキットならDOT4。サーキット走行の頻度が高いならDOT5.1、サーキット専用ならDOT5がベターだろう。

ブレーキフルードの「交換サイクル」はどれくらい?

 最後に交換サイクルの目安について。街乗りオンリーでDOT4以上を使っているなら2年もしくは2万kmが基準、ワインディングを走る機会が多い人は半年から1年で、サーキットを走るならエンジンオイルと同じで毎回の交換が理想だ。どれだけ優れたパッドやキャリパーを使っても、フルードが劣化していたら性能は発揮できない。大きな事故に直結するパーツだけに甘く考えず、選び方とメンテナンスはくれぐれも慎重に!

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