ボディに傷や凹みがある場合は注意が必要
いざ施工を迎える段になると「塗装とラッピングは違います」と言われ少し驚いた。どういうことかといいえば、全塗装は元の塗装を剥がしたりして下地を作り、凹みや傷があれば同時に板金も行いボディ自体を修復していく。しかしカーラッピングはそのような板金作業を行わないので、凹んだ部分は凹んだまま、傷の部分はものによっては隠れることもあるが、傷が浮き出てしまうこともあるという。カーラッピングを考えている人はこれを肝に銘じておきたい。
私のクルマの場合、幸いにしてボディの凹みなどは見られなかったが、赤いボディには社外品のオーバーフェンダーが装着されていて、そこにはなぜかシルバーが塗られていた。このオバフェンをどうにかしたくて塗るか貼るかオバフェン自体を外すかで悩んだ訳だが、赤いボディは経年劣化で少しずつ退色している反面、オバフェンで隠れていた部分は変色していない可能性が高い。つまり退色した部分とそうでない部分が2トーンになっている恐れがあった。
もちろんオバフェンをシルバーから別の色に塗り替えることも可能だが、劣化によって外すときに割れる危険性もある。オバフェンを装着したままその部分だけラッピングできるか考えてみたが、退色したボディカラーに対して色味を馴染ませることは厳密には無理だ。塗装ならば職人がうまくつなぎ目をぼかすなどして対応できるが、ラッピングシートは工業製品なので色褪せしたカラーにはできない。
そこでオバフェンだけ黒のラッピングで赤×黒のツートーンでコーディネートすることも検討したが、それもちょっと……。ということでクルマ全体をラッピングしてしまうフルラッピングに行き着いた。
マットカラーはもちろん半ツヤなども選べる
ラッピングシートは豊富な色から選ぶことができる。ボディ塗装に近い定番のカラーがあるなかで、少し遊び心のある「サテンダークグレー」という半ツヤのラッピングフィルムを選んだ。当初はマットブラックも考えたが、施工当時(2018年)はサテンダークグレーが新色だったため施工数も少なく半ツヤの質感が素敵だったので、「せっかくなら」という冒険心も手伝った。
もちろん全身サテンダークグレーでもよかったが、ルーフやアンダースポイラーはウェットカーボン調を選択。走りのイメージがあるスバル・レヴォーグにはカーボン調が似合うかもしれないという安直な気持ちもあったのだ。
クルマを1週間ほど預けてカーラッピングを施工
ラッピングフィルムを貼る作業は、まず下処理を行い、細かいパーツはボディから外して別工程で仕上げる。
ネックとなったオバフェンを外すのは面倒が起こりそうなのでそのまま作業を実施。施工は職人が2〜3人で一気に行う。ルーフやドアは大きめにカットしたシートを貼り込みながら空気が入らないように細かな修正をしていく。
曲面やエッジが立つ部分はヒートガンで温めて伸ばしながら貼り合わせるのだが、素人には難しいと感じるところを熟練の職人たちは一気に仕上げていく。
ドアやリヤゲートの内側などはさすがに貼れないので元のカラーが見えてしまうのは仕方ない。もちろん全部のパーツを外してバラバラにすれば貼ることも可能だが、そのぶんの作業工賃と作業時間が増えるので相当なコストがかかってしまう。
そんなこんなでクルマを1週間預けて作業は完了。できあがった状態はうっとりするほど美しい。この世に1台しかないオリジナルのレヴォーグが完成したわけだ。半ツヤの色合いは室内でみると少し明るいが、屋外でみるとかなりシックな引き締まった色合いだ。