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「カーラッピング」って何?「全塗装」よりお得な「クルマの着せ替え」を実際にやってみた

カーラッピングのメリットとデメリット

不満のボディカラーをカーラッピングで解決

 新車を購入するときは好きなボディカラーを選ぶことができるので問題ないが、中古車の場合はボディカラーや装備、年式や走行距離などを優先して探すと、よほどの幸運に恵まれない限り希望条件のうちどこかを妥協しないといけないことがある。例えば「装備は良いけどカラーが……」とか、「カラーは良いけど装備が……」などである。 私の場合は、知人が手放したクルマを購入したのだが、車種や装備は大満足だったけど、難点がひとつ。それがボディカラーだった。初対面したクルマを見たときの感想はなんとも言いがたい驚きが……。カスタマイズされている車両で、ボディカラーを見た瞬間「ギョッ」としたのだ(前のオーナーさんごめんなさい)。

 そこで全塗装(オールペン)することも考えたが、カーラッピングしてみることにした。

全塗装と比べて施工後のリスクが低い!?

 自動車雑誌やウェブなどでクルマの撮影を生業にしているカメラマンの私は、常日頃からカスタムカーやチューニングカーが身近な存在だ。ちょっとした会話のなかで「オールペンしちゃった!」とか「全塗(ぜんと)しちゃえば良いんだよ」など、軽いノリで話されるボディ色の塗り替え。最近は少なくなったとはいえカスタマイズの世界ではわりと簡単に行われるカスタム手法だ。しかし、いざ自分がやるとなると躊躇してしまう。

 なぜならばこのクルマを手放す時に査定されて、オールペンをしていることで査定額がグッと下がることや、万が一ディーラーで入庫禁止なんて言われたらどうしようということだ(実際は入庫拒否になることはほとんどない)。

 そこで目先を変えて辿り着いたのがカーラッピングだったというワケだ。

手軽にイメージチェンジできることは間違いなし

 カーラッピングの手法をざっくり説明すると、専用のラッピングフィルムをボディに貼り付けるだけだ。ラッピングシートを貼っているだけなので、クルマを手放すときはそのシートを剥がせば元どおり。オールペンよりも手軽に施工できるイメージがある。

 また、さまざまなラッピングシートがあるため色やその色調さらにはレザー調など、塗装とは違ったアプローチでイメチェンが図れるのも魅力だ。もちろん施工業者は多く、費用やクオリティは正直ピンキリ。フィルムカラー選びと同様に施工ショップ選びが大切だ。

 施工ショップを依頼した決め手は、スーパーカーなどの高級車から痛車、レーシングカーまで手がけていること。つまり経験や実績に間違いがないと判断できたからだ。 ちなみに余談だが、カーラッピング=カスタマイズ手法と取られがちだが、もともとはプロテクション(保護)フィルムとして無色透明のフィルムを高級車に施工したことが始まりとも言われている。つまり、塗装の仕上げにクリア塗装するのと同様に、走行中の飛び石などから大切なボディを守る役目を担っていた。

ボディに傷や凹みがある場合は注意が必要

 いざ施工を迎える段になると「塗装とラッピングは違います」と言われ少し驚いた。どういうことかといいえば、全塗装は元の塗装を剥がしたりして下地を作り、凹みや傷があれば同時に板金も行いボディ自体を修復していく。しかしカーラッピングはそのような板金作業を行わないので、凹んだ部分は凹んだまま、傷の部分はものによっては隠れることもあるが、傷が浮き出てしまうこともあるという。カーラッピングを考えている人はこれを肝に銘じておきたい。

 私のクルマの場合、幸いにしてボディの凹みなどは見られなかったが、赤いボディには社外品のオーバーフェンダーが装着されていて、そこにはなぜかシルバーが塗られていた。このオバフェンをどうにかしたくて塗るか貼るかオバフェン自体を外すかで悩んだ訳だが、赤いボディは経年劣化で少しずつ退色している反面、オバフェンで隠れていた部分は変色していない可能性が高い。つまり退色した部分とそうでない部分が2トーンになっている恐れがあった。 

 もちろんオバフェンをシルバーから別の色に塗り替えることも可能だが、劣化によって外すときに割れる危険性もある。オバフェンを装着したままその部分だけラッピングできるか考えてみたが、退色したボディカラーに対して色味を馴染ませることは厳密には無理だ。塗装ならば職人がうまくつなぎ目をぼかすなどして対応できるが、ラッピングシートは工業製品なので色褪せしたカラーにはできない。

 そこでオバフェンだけ黒のラッピングで赤×黒のツートーンでコーディネートすることも検討したが、それもちょっと……。ということでクルマ全体をラッピングしてしまうフルラッピングに行き着いた。

マットカラーはもちろん半ツヤなども選べる

 ラッピングシートは豊富な色から選ぶことができる。ボディ塗装に近い定番のカラーがあるなかで、少し遊び心のある「サテンダークグレー」という半ツヤのラッピングフィルムを選んだ。当初はマットブラックも考えたが、施工当時(2018年)はサテンダークグレーが新色だったため施工数も少なく半ツヤの質感が素敵だったので、「せっかくなら」という冒険心も手伝った。

 もちろん全身サテンダークグレーでもよかったが、ルーフやアンダースポイラーはウェットカーボン調を選択。走りのイメージがあるスバル・レヴォーグにはカーボン調が似合うかもしれないという安直な気持ちもあったのだ。

クルマを1週間ほど預けてカーラッピングを施工

 ラッピングフィルムを貼る作業は、まず下処理を行い、細かいパーツはボディから外して別工程で仕上げる。

 ネックとなったオバフェンを外すのは面倒が起こりそうなのでそのまま作業を実施。施工は職人が2〜3人で一気に行う。ルーフやドアは大きめにカットしたシートを貼り込みながら空気が入らないように細かな修正をしていく。

 曲面やエッジが立つ部分はヒートガンで温めて伸ばしながら貼り合わせるのだが、素人には難しいと感じるところを熟練の職人たちは一気に仕上げていく。

 ドアやリヤゲートの内側などはさすがに貼れないので元のカラーが見えてしまうのは仕方ない。もちろん全部のパーツを外してバラバラにすれば貼ることも可能だが、そのぶんの作業工賃と作業時間が増えるので相当なコストがかかってしまう。

 そんなこんなでクルマを1週間預けて作業は完了。できあがった状態はうっとりするほど美しい。この世に1台しかないオリジナルのレヴォーグが完成したわけだ。半ツヤの色合いは室内でみると少し明るいが、屋外でみるとかなりシックな引き締まった色合いだ。

光沢は御法度な半ツヤなので洗車にも気をつかう

 さてここからはカーラッピングのリアルな実情に迫ってみたい。一番の疑問は洗車やメンテナンスの問題だ。

 まず洗車は手洗いが基本となる。ラッピング専用のコーティング剤もあるようだが、半ツヤのラッピングシートなのでツヤを出さないようにコーティングはしていない。また、趣味のクルマではなく、日々の撮影業務でフル稼働しているので、手洗い洗車する時間がないとやむなく洗車機に入れてしまうこともある。フィルムが剥がれる心配こそないが、何回も洗車機に入れていると徐々に艶っぽくなってきたような気がする。やはり磨かれてしまうのかもしれない。

飛び石で塗装面が露出してしまうのがネック

 また、日々の走行による飛び石で傷が付き、部分的に下の色(赤)が見えてしまう難点もある。走行距離が延びればそのぶんだけ下地(塗装面)の露出箇所が増えてくる。その大きさは直径数mmの世界なので目立つものではないが、マットグレーのなかに赤い斑点が見えるのは少しかわいそうだ。

 またクルマの乗降時に無意識にサイドステップを蹴ってしまいここにも傷が……。塗装であればコンパウンドで磨けば消えるのだが、カーラッピングはそうはいかない。素材によっては問題ないのかもしれないが、コンパウンドで磨くと折角の半ツヤに光沢を与えてしまいかねないので手を出せずにいる。この辺が塗装とは違う悩みになる訳だ。

 また、樹液か何かが乾いたあとのような謎のシミもできていて、これも消せないのが悩み。幸いマットグレーのおかげでほとんど気がつかないレベルなのが救いだが……。

フィルムの劣化より糊が塗装にダメージを与えることも

 私が経験したカーラッピングをまとめてみると、保管状況や走行状況により劣化の進行が異なるので耐用年数は一概には言えない。施工ショップからはおよそ3〜4年で剥がすほうが良いと言われたが、これはラッピングシートがダメになるということではなく、シートに付いている糊がダメになり、剥がそうとすると塗装も一緒に剥がれてしまう可能性があるからだそうだ。

 とくにルーフとボンネットは紫外線を受けやすく劣化の進みは早いとのこと。自分もそろそろ3年が経過するので剥がして結果を見てみたい気持ちもあるが、剥がしてしまうと次の処置費用を考えて悩ましい。

 もちろん、施工にはそれなりのコストがかかってしまったが世界で1台のオリジナル車両が手に入るのは非常に喜ばしいこと。メリットもあればデメリットもあるが、カスタマイズメニューのひとつとして塗装の代わりにカーラッピングする手は経験者としてアリだと言える。

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