国会議員が手動装置でサーキットを走行
車いすドライバーの青木拓磨選手が主催するHDRS(ハンド・ドライブ・レーシング・スクール)。千葉県・袖ケ浦フォレストレースウェイで2021年最初のスクールが5月17日に開催された。風が強く、たまに雨がちらつくようなあまり良い環境ではなかったものの、6台の持ち込み車両と見学や同乗希望者ら、15名の健常者・障がい者が参加した。
青木選手が直接指導するレーシングスクール
レーシングスクールといいながらもレースを行うことを目指したものではない。自身のクルマを持ち込んで、サーキット走行を楽しみながら、車両の性能をしっかり使い切ることを体験できる機会となっている。
とくに身体の一部に力が入らない障がい者にとっては、健常者以上にシートベルトの正しい装着が重要。さらに上腕だけで車両の操作をする車いすドライバーとして、無理のない操作を的確に行える乗車姿勢を再確認できるイベントとなっている。青木選手が直接指導する機会も多く、他にはない特色あるスクールとなっている。
自民党モータースポーツ振興議員連盟の岡敏孝衆議院議員も参加
今回、このHDRSに自民党モータースポーツ振興議員連盟による視察が行われた。当初は、会長である古屋圭司衆議院議員を始め、中山泰秀衆議院議員、青山繁晴参議院議員、そして大岡敏孝衆議院議員の4名が参加予定だった。しかし、残念ながら緊急非常事態宣言下ということで、会を代表して、大岡議員が感染予防に配慮したうえで参加した。
大岡議員は「今回は青木選手の側から議連に対してぜひとも視察をしていただきたいという要請がありました。それを受けて、自民党MS議連の総会を開きまして、議連として支援しましょうという決議いたしました。あいにくの緊急事態宣言のため、移動自粛という話になりまして。かといって一旦支援を決めたことに対して誰も行かないというのも。ということで、私が今回ご挨拶とお話を承りに来たという次第です。運営は順調のようですので、行政としての理解を求められました。今回はスポーツ庁からも障がいスポーツ担当者をひとり同行してもらいましたので、モータースポーツへの認識がこれまでなかったので、いい機会になったと思います」。
「機械は人それぞれに合わせて、オーダーメイドでアタッチメントとか作れます。だから機械の力を借りれば、広く一般に言われている障がいがじつは障がいじゃなくなるという話を拓磨選手から聞きました。すごく重要な指摘だし、重くて的を射た言葉だと感じました。モータースポーツは他のスポーツ以上に機械の領域が大きいからこそ、健常者と障がい者が同のフィールドで戦えるようになると思っています。そのモータースポーツの先行しているノウハウが、能力の欠損してしまった部分を機械で補えばという発想で、他のスポーツに広く影響を与えることができるんじゃないかと思います」。
初参加でも楽しめるHDRS
また、今回これに初めて参加する参加者もいた。山村泰史さんは15歳の時に車外放出の事故に遭い、胸椎5-6の脊椎損傷で下半身の不全麻痺。さまざまなスポーティカーに乗ってきたということだが、ハンドドライブのレーシングカート以外で本格的なサーキット走行は初めて。
麻痺の関係で左ハンドル車のほうが乗りやすいということで、この車両を購入。車両はフジオートのアイテムを装着して使用している。ステアリング操作はFUJICON SG-12グリップを装着して右手で操作、加減速は同じくFUJICONのコラムタイプの手動装置でシフト操作ボタンも装着する。