個性があり過ぎるヘッドライトを紹介!
人形は顔が命ではないけれど、ヘッドライトというのは人間に例えれば目のような存在。そのクルマの個性を決める重要な要素だ。実際、丸目や角目、最近ではツリ目もあったりして、実に個性あふれるものが多い。
①リトラクタブルヘッドライト
今や絶滅してしまった形式もあって、その代表格がリトラクタブルヘッドライトだ。スーパーカー世代にはとくに刺さる形式で、一応説明しておくと普段はフタが閉まっていて、点灯するときそこが開いてライトが出てくるもの。日本車でも多く採用されていた。
1980年代から1990年代にかけて、スポーツカーには欠かせない装備と言っても過言ではなかった。ハチロク、スープラ、MR2、RX-7、ロードスターなど、数え出したらキリがないほど。当時のクルマ好きはリトラクタブルヘッドライトであることをアピールするために、意味もなく開閉したりしたものだ。
今では絶滅した理由としては、欧州での前方斜め下の視界確保がきっかけだったというのが実際のところ。よく見かけるフロントの回頭性がよくないとか、衝突安全性、耐久性なども後押しはしたのかもしれないが、直接的には視認性が問題だった。ちなみに日本車の最初はトヨタ2000GTで、最後はマツダFD3S型RX-7である。
②セミリトラクタブルヘッドライト
そのほかのユニークなヘッドライトを見ていきたいが、じつはリトラクタブルヘッドにもユニークなものがある。Z31型のフェアレディZはパラレルライジングヘッドランプと呼んだ半目が特徴的で、パッシングのしやすさなどでこのような形になっている。
海外でも半目はあって、アルファロメオのモントリオールはライトの上にルーバーを切ったフタがかぶさっていて、上に上がると思いきや、なんと下に下がるというか落ちるという意表をついたもの。しかも、今まで何台か見たが、どれもが右が先で左が後という、ズレているものばかり。調子が悪いだけなのか? 理由はあるのかもしれない。
③「素直じゃない」リトラクタブルヘッドライト
“素直じゃない”リトラクタブルヘッドというのもあって、それが反転タイプ。オペルGTは横から。4代目コルベットはそのまま180度、クルリと回ってライトが現れた。まるでドンデン返しみたいで、実際に見るとやりすぎ感というか、そこまでしなくてもと思うほどだ。
④ポップアップ式ヘッドライト
変則という点では、ポルシェ928やランボルギーニ・ミウラの起き上がり系も含まれるだろう。スーパーカーブームの頃、ミウラはどうやって前を照らしているのだろうか? もしかしたら、寝たままでも問題なく照らすことができるのかもと思ったものだが、実際は後ろが持ち上がるのが正解。928は見たまんま直感的に予想できて、一目瞭然だった。
番外編:リトラクタブルヘッドライトの「動力源」
そしてリトラクタブルヘッドの番外編として紹介したいのが名車として名高いロータス・エランだ。前に開くタイプなので一見すると普通だが、モーターではなく、エンジンの負圧を利用しているので、ダラっと開いて、しかも両方同時でなく、ズレることが多くて違和感がありありだった。
⑤コンシールドタイプライトカバー
リトラクタブルヘッドから離れてユニークなタイプを探してみると、日本車でもあったのがギャランのルーツとなるコルト・ギャランで、ルーバー(純正オプション)が付いているのが特徴。スクエアなボディと相まってちょいワルな雰囲気が漂っていた。
このあたりは関わっているとされるジウジアーロの指示なのかもしれない。しかし、途中で丸目に変更されて、ルーバーも廃止となってしまった。ルーバーも含めて、現在はライトの前になにか遮るものを付けることが法的にできない。
⑥ヒドゥンヘッドライト
そしてアメ車が好んで採用していたのが、ただのフタ。リトラクタブルヘッドも似たような思想なのかもしれないが、点灯させないときはフタが付いていて、点けるとフタが上に収納されるというスタイル。厳密に言うと空力も少しよくなるだろうが、基本的には閉まっているときののっぺりとした感じがいいのだろう。
フォード・トリノ、ダッヂ・チャージャー、キャデラックなどに採用されていた。ちなみにキャデラックにはスーパーカーブームの頃に実際に乗せてもらったことがあって、ライトも点けてもらってカウンタックみたいでスゲー、と喜んでいたのを覚えている。とにかく隠れているライトが、中から出てくるというのは画期的なことだった。
そのほかにも、時代を先取りしすぎたシトロエンDSやSMはステアリング連動タイプを採用しているなど、ライトひとつとってもユニークだったり時代を反映しているものがけっこうある。その点では、最近のライトは少々つまらないのかもしれない。