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日本人記者でもサーキット内で「コロナワクチン接種」に成功!「インディ500」取材で痛感したアメリカの「太っ腹」精神

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TEXT: 天野雅彦  PHOTO: 天野雅彦,ホンダ

メディアにワクチンを打ってくれるインディカー・シリーズ

 昨年は世界でもっともコロナ患者、死者の多い国だったアメリカが、ワクチン登場で180度転換。今やCOVID-19に関しては世界でも一番安全な国になっているのではないだろうか? 5月も下旬となって、ワクチン接種を1回以上行っている成人の割合は50%に届いた。日本は自前でワクチンを作れていない上、海外からの入手に出遅れ、入手後も国民にそれらを接種させる手筈がうまく行っていないようだが……。

思い知らされた新型コロナウイルス対策 大イベントだからこそ

 昨年のアメリカはダメな時のアメリカであったように思えてならない。新型コロナウイルスの蔓延にも関わらず「パンデミックなんて起きてない」ぐらいの政策を取り続け、感染がどんどん広がり人々から悲鳴が上がっていた。それがバイデン大統領への政権交代によって一転。”やる気になった時には凄いアメリカ”に変わった、ということだろう。そこからは驚くべきスピードでワクチン接種が広まっている。スーパーマーケット=ウォルマートでもワクチン接種ができる

 私は3月末に渡米して、4月の初旬にインディカー・シリーズの開幕直前テストに取材に行ったが、その時にシリーズ主催者が、フルシーズン取材をする日本人メディアにワクチン接種の手配をしてくれ、テスト終了後のサーキットで1回目を打ってもらうことになった。

 アメリカでは、人に会うのが仕事のジャーナリストが”エッセンシャル・ワーカー”に含まれている州もあると知って、おおいに感心もした。知り合いのジャーナリストはかなり早い段階でワクチンを打ってもらえたという。かたや日本では自動車レースのリポーターなどという職業は奇人のやる種の仕事で、地位も何もあったもんじゃない、と個人的には思っているが……。日本の社会通念なのか、その辺りの解釈からしてまるで異次元のアメリカである。ポールポジションを奪ったスコット・ディクソン

 パドックやピットでドライバーやチーム関係者、オフィシャルなどに直接会って取材をするわれわれがワクチンを打っていれば取材される側も安心だ。シリーズの現場の安全性を高めるために、サーキット内で働く者は全員ワクチンを接種させる方針になったということだ。海外メディアでインディカー・シリーズのフル・シーズンをカバーしているのは、日本からは私と友人のふたりぐらいなので、クルーやシリーズ関係者の枠に入れてもらえたようだ。

 ワクチンはアメリカ人向けのはずだが、出張遠征して滞米中のわれわれにも分け与えてくれる。そういうところにアメリカの人の心の広さを感じた。海外で病気に罹ると非常に厄介なので、本当にありがたかった。レースの直後、ガレージ・エリアでワクチン接種

 2回の接種には3週間のインターバルが必要で、2回目は5月初旬にテキサス州のサーキットで、シリーズ第4戦が終わった直後に打ってもらった。ガレージ・エリアでワクチンを打つ、という貴重な体験。われわれはインディアナ州だけでなく、テキサス州にもお世話になっちゃった、ということなのかもしれない。これで”いつ罹ってしまうのか……”と怯えながら生活することから私は解放された。

 かたや、開催が世界に物議を醸したままの東京オリンピック。どうにも話が逸れてしまうのではあるが思わざるを得ないことばかり。取材予定スタッフたちはもちろん、重要なボランティアの方々ですらまだまだワクチン接種まで至っていないのが日本の現状だろう、などと……。

イベント開催への情熱がたぎるインディ500

 バイデン政権はワクチンの普及に全力投球を続けている。インディカーもそこに賛同して、実際に行動している。昨年のインディ500は5月から8月へと開催を遅らせて開催となった。104回の歴史のなかで初めての無観客でだった。レースは激しいバトルが展開される素晴らしいもので、佐藤琢磨の優勝(それも2回目)と結果も(われわれにとって)最高だったが、巨大な観客席が空っぽというのは異様かつ残念な光景だった。去年の佐藤琢磨インディ500優勝のチェッカーフラッグシーン

 満員の大観衆が喉を枯らして歓声を送り続ける、いつもの盛り上がりに欠けていた昨年のインディ500。インディカーとインディアナポリス・モーター・スピードウェイは、「今年は絶対に観客席にファンを迎え入れる」という強い決意を持って昨秋から行動して来た。1月からはスピードウェイをワクチン接種用施設として提供し始めてもいたのだ。広大な敷地があるので、接種待ちのための車列が伸びても一般道に渋滞を巻き起こすことがない。クルマに乗ったままの”ドライブスルー”方式でのワクチン接種という、いかにもアメリカ的なシステムが作られた。

 シリーズ主催者とスピードウェイは州政府、地元の自治体とのコミュニケーションを密にし、どれぐらいの規模での開催なら安全が保てるかの検討が重ねられた。その結果、今年のインディ500はまだ観客席を100パーセント解放せず、13万5000人にチケットを販売することになった。大幅に制限したのに世界最大のスポーツ・イベントであることは保ったということには、ただただ驚くしかない。

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