スポーツモデルでも安ければ売れるんです!
最近はクルマ離れが進んでスポーツモデルが売れないといわれますが本当でしょうか。私にはクルマのほうが「ユーザー離れ」を起こしているようにも思えてなりません。とくにスポーツモデルの車両本体価格が若者のクルマ離れに拍車をかけているように思います。
ふたり乗りのスポーツカーは手荷物の収納にも不便なので、後席を備える車種を選ぶと大半が300万円以上です。すでに生産を終えましたがトヨタ86は300万円を超えます。トヨタGRヤリスRZ、スバルWRX S4、ホンダ シビックタイプRなどは400〜500万円なので、そう簡単には買えません。
90年代はスポーティな格安ホットハッチが豊作
昔話をすると、1997年に発売された1.6L直4VTECエンジンを搭載するシビックタイプRの初代モデルは199万8000円でした。当時200万円前後の価格帯には、トヨタカローラレビンやスプリンタートレノの1.6L DOHCエンジン搭載車、日産パルサー1800GTなどが用意されていました。
当時と今のサラリーマンの平均所得を比べると、現在のほうが下がっていますから「クルマを買おう!」と思った時に最初に意識する価格帯は200万円前後が多いです。諸費用に必須のオプション装備を付けたら250〜280万円くらいに達します。 子供が生まれてミニバンを買う時は生活必需品なので250〜280万円程度なら頑張って負担します。しかし趣味で買うスポーツモデルはそう簡単にはいきません。奥さまをなんとか説得しても200万円程度が目安でしょう。ところが、この価格帯の車種が不足しているのでスポーツモデル市場全体が空洞化しています。
いわばスポーツモデルの「ユーザー離れ」です。この悲しい状況のなかで、唯一願いを叶えてくれる車種がコンパクトカーの「スイフトスポーツ」と軽自動車の「アルトワークス」です。奇しくも両方ともスズキ車ですね。
発売から4年半が経過しても売れ続けるスイフトスポーツ
スイフトスポーツは人気が高く、2021年1〜4月には1カ月平均で約1000台を登録しました。実はスイフト全体の42%をスイフトスポーツが占めています。1.4L直4ターボエンジンを搭載して、最高出力は140ps、最大トルクは23.4kg-m。NAエンジンなら2L以上に相当する性能です。
しかも前輪のストラットと後輪のショックアブソーバーにモンロー製のパーツを使うなど、足まわりやブレーキを熟成させました。この充実ぶりで6速MT(マニュアルトランスミッション)の価格は201万7400円です。人気が高いのも納得できます。 アルトワークスもスイフトスポーツと同様、アルトをベースに内外装やメカニズムを大幅に変更しました。660ccのターボは専用にチューニングされ、1Lのノーマルエンジンに匹敵する性能を発揮します。5速MTもシフトレバーの操作感を向上させました。 足まわりも専用にセッティングされ、機敏な運転感覚を味わえます。前席には名門のレカロ製が備わります。この内容で5速MTの価格は153万7800円だから割安です。