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もはやニッポンの国宝レベル? 独断と偏見で選ぶ「マツダロータリー」7傑

今なおファンが多い伝説の名機「ロータリー」

 電気モーターのような滑らかな回転上昇感、軽量コンパクトでパワフル。世界中でマツダだけが量産実用化に成功したロータリーエンジンは、いまなお多くのファンに支持され続けている。現状では、環境性能(燃費性能に基づく)への対応から、新型車を購入することは出来ない状況。しかしドライブフィールも含めた独自のメカニズムはやはり日本の技術遺産だ。それぞれ時代を代表する車両として、強く印象に残るモデルを独断と偏見で選んでみた。
 選択ポイントは、それぞれの時代に応じてどんな位置付けだったか、を重視した。現在の視点で振り返り一律で車両を評価してしまうと、メカニズムの進化した新しい車両ほど有利。旧世代の車両は評価に値しなくなってしまうからだ。また、ロータリーエンジンを積むモデルは意外と多かったが、軽量コンパクト、高出力性というロータリーエンジンの本質にそぐわない車両は除外した。名付けてマツダロータリー7傑。みなさんの印象と同じなのか違うのか、選択理由に留意していただければ幸いだ。

第7位 コスモスポーツ

 世界的に未知のエンジン、ロータリーを実用化した最初のモデルとして、どうしてもランクインさせなければならない車両。初のロータリーエンジン搭載車となるコスモスポーツ(L10A型)だ。 ロータリーエンジン開発のポイントは耐久性と信頼性。すべてが未知数だったコスモスポーツの10A型ロータリーはオーバークオリティともいえる素材の投入で初の実用化に対応。ほぼノーマルに近い仕様で、その耐久性を世に証明するため臨んだマラトン・デ・ラ・ルート84時間(1968年、ニュルブルクリンク)は、ポルシェ、ランチアに次ぐ4位完走と想定を超える戦績を残すことに成功。ロータリーに社運を賭けたマツダの戦略が間違いでなかったことを証明するロータリー史の記念碑的存在。順位というのではなく、まず最初にもってくるべき車両として扱った。

第6位 ファミリア・ロータリーSS/TSS

 プレミアムスポーツカーのコスモスポーツに搭載されデビューしたロータリーエンジンだったが、マツダの狙いはロータリーエンジンの普及。その高性能を廉価版にして普及価格帯のモデルに搭載したのがファミリア・ロータリー(M10A型、100ps)だった。 当初はスポーツ性を謳うクーペのみだったが、1年後に実用性を意識した4ドアセダン(SS)と少し遅れてスポーツ色の強い内装を持つモデル(SST)を追加。一般的な1000ccモデルよりは高価だったが、当時一般的なイメージで高性能車と捉えられていたスカイライン2000GT(GC10型、105ps)と比べると300kg近く軽量でほぼ同等の出力。しかし価格は10数万円も低く画期的なモデルだった。羊の皮を被った狼の称号をあえてコストパフォーマンスに優れた4ドアセダン、ファミリアロータリーに与えたい。

第5位 サバンナGT

 ロータリーエンジンの高性能ぶりを広く世の中に印象付ける目的で、マツダはサーキットレースに積極的な取り組みを見せた。その中で不可避の対決となったのがスカイラインGT-Rとの王座争いだった。 マツダは最初ファミリア・ロータリーで、次いで大柄になるが排気量の大きな12A型ロータリーを積むカペラ(S122A型)で、さらにファミリアよりシャーシ性能で上まわる新型車、サバンナ(S102型)でGT-Rと戦った。1972年5月のJAFグランプリで最終仕様とも言えるサバンナRX3を投入。通常のサバンナが積む10A型エンジンを12A型に換装したモデルで動力性能が飛躍的に向上した。晴れの大舞台でGT-Rを下したこのモデルは同年9月にサバンナGTとして商品化された。軽量コンパクトな車体に格上のパワフルな12A型エンジンを積む動力性能自慢のモデルとして5位にランクした。

第4位 初代RX-7

 排出ガス対策時代、ロータリーエンジンも他エンジンと同様、規制値をクリアするため腐心を重ねていたが、マツダ独自のサーマルリアタクー方式によって達成。排出ガス規制に企業力を傾注しなければならなかった状況から解放された。その後ロータリーエンジンが持つ本来の高性能、スポーツ性を復活する目的で登場したのが初代RX-7だった。 本来は2シーター仕様として設計され(日本仕様は4シーター設定)、これに130psの12A型ロータリーを組み合わせてスタイリングもスポーツカー然たるものだった。車重は約1tと重くなったが、現在のレベルから見れば十分に軽量なモデル。 シリーズ末期にはターボを組み合わせたRX-7ターボも登場。こちらは165psと国内トップレベルの動力性能を発揮した。軽量コンパクト、高出力なロータリーエンジンの特徴を具現化したモデルとして、そのキビキビとした動きとともに4位にランクした。

第3位 ユーノスコスモ

 1990年、コスモとして4代目となるJCESE型は、ロータリーエンジンの可能性を求める車両として、市販ロータリーとしては究極のメカニズムを与えられていた。 搭載する20B型エンジンは3ローター構成。2ローターの13B型に、さらに1ローターを追加した形で排気量は653cc×3の1959cc。これにシーケンシャル方式のツインターボを装着。カタログ値は280psだったが、メカニズムから考えても400psは軽く発生できる構成だった。 マルチロータリーは、グループCレースカー757の時代に3ローター13G型、767になって4ローター13J型に発展。ロータリーエンジンを使う最終型となる787Bの時代にマツダ念願、日本車初のル・マン制覇を成し遂げた。コスモの20B型はマツダがレーシングカーとして本格的な戦闘力を求め始めた第1歩となる13G型を基本とするエンジンで、量産車としての回転の上質感、パワー感はマツダエンジニアが目指す究極のものだったとも言えるエンジンだった。車両の上質感ももちろんだが、最初で最後の3ローターエンジン搭載車、しかもターボ装着車まで用意した点を高く評価。ロータリー乗りとしては手元に置いておきたい1台だ。

第2位 RX-8

 現状、ロータリーエンジン搭載の最終モデルにあたる。動力性能を前面に押し出した性能本位のスポーツカーではないが、滑らかなエンジンフィール、十分以上のパワー感、優れたシャーシ性能と、走る、曲がる、止まるの動きに対し、すべてにおいて完成度の高さを感じさせる車両として2位にランクした。 搭載エンジンの13B型は自然吸気仕様ながら250psを発生。40年近い歳月を積み重ねて熟成されたロータリーテクノロジー「RENESIS」による13B-MSP型は、ひと昔前ならターボ過給に頼らなければ得られない出力値を実現した。だからといってピーキーなわけではなく、実用域のトルク特性も十分。むしろ、居住性も確保した4シーター4ドアクーペとして、エンジン性能、シャーシ性能を高次元でバランスした究極のロータリー搭載車と言うべきなのかもしれない。本来なら1位にランクすべきなのかも……、と最後まで迷ったモデルだ。

第1位 RX-7(FD3S)

 最後までRX-8と争ったが、やはりロータリーの真髄は軽量コンパクトでパワフルなことだと考え、やはりロータリーエンジンにもっともふさわしい車両はスポーツカーという割り切り方で、ロータリー史上究極の走りを示したRX-7の最終型、FD3Sを1位とした。 デビュー直後のFD3Sはエンジンが強力で、とにかくフラットな路面(とくにサーキット)では抜群に速いシャーシセッティングだったが、ワンダリング性能が悪く微舵応答も神経質と、一般路をまともに走れないようなクルマだった。もちろん、こうしたあたりはその後改善されたが、あくまで本質は走りの性能。13B型ターボは最終仕様で280psを発生。この時代、280psはメーカーの自主規制値だったが、実用性を確保した上での350psも十分可能と言われたエンジンで、クルマが持つベクトルはすべて走りに集約されていた。アクセルを踏み込んでいったとき車内で聞くエンジン音は、その回転上昇の速さと共に、ドライバーにクルマを速く走らせている、という興奮と刺激を与えてくれた。総合的なクルマの用途では決して使い勝手に優れたクルマではなかったが、とにかくクルマを速く走らせる、あるいは速さこそクルマの価値すべて、といった見方をするなら、ロータリー史上ナンバー1のモデルであることは間違いない。

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