VWゴルフGTI(2代目)
1983年、FF2BOXとして新たな市場を開拓したVWゴルフが第2世代にモデルチェンジした。車体はひと回り大きくなり、搭載エンジンも上級モデルでは1.8L(ゴルフ1末期に1.8L化)を軸とするモデル設定になっていた。ホットモデルのGTIは当初SOHC8バルブのエンジン(112ps)を採用したが、より洗練された動力性能、運動性能を標榜するGTIには不十分な性能と判断され、1986年にDOHC16バルブエンジン(139ps)に換装された。 このエンジンの採用で最高速度は200km/hを超すようになり、俊敏な動きだけを追い求めたホットハッチではなく、高速ツアラーとしての車両性格も合わせ持つようになった。なお、GTIは1989年にスーパーチャージャー付きのGTI G60が登場。出力は180psと大幅に引き上げられたが、最高速度は16Vと大差なく、低中速域からハイエンドにかけてのトルク特性全般の改善、加速力の引き上げを図った変更だった。
ボクスホール・アストラGTE16V
興味深いモデルとして、ボクスホールのアストラGTE16Vを挙げておきたい。ボクスホールはドイツオペルのイギリスブランドとして知られるが、ここで紹介するアストラGTEは、本国ドイツではオペル・カデットEの名前で販売されていたモデルだ(写真はオペル版)。カデット自体は1979年までFR車として作られていたが、同年のモデルチェンジで全面刷新が図られFF方式となり、新時代のユーザー層に対応するモデルとなっていた。アストラGTE16Vは、FF2世代目となるカデットEのボクスホール仕様車で、コスワース開発のC20XE型DOHC16バルブエンジンを搭載。もともとモータースポーツユースを見据えたエンジンだったため、出力値は156bhpと同クラス車両と比べて高めの設定。0〜96km/h(60マイル)加速で7秒という快足ぶりを示していた。 もともと機敏な走りが魅力のFFホットハッチだったが、どのモデルもモデルチェンジを経て大型重量化の道を歩み、より強力となったエンジンは高速巡航性能に方向性が振り向けられていた。ホットハッチに「山椒は小粒でピリリと辛い」を求めようとするならば、創生期の軽量コンパクトなモデルがいちばんそれらしいのかもしれない。