この記事をまとめると
■大ヒット映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場
■映画さながらの電気自動車へコンバート
■個性的なデザインは現代でも存在感バツグン
過去から未来へ! EVデロリアンが環境問題に警鐘を鳴らす
今年で生誕40周年を迎えた「デロリアンDMC-12」。デロリアンのデザインに携わったイタルデザインでは、2021年1月21日に生誕40周年のプロジェクトとして「VISION BEYOND TIME」を発表。同時にDMC-12のシルエットをイメージさせるティザー画像を公開するなど、否が応でも期待が膨らむ1年になりそうだ。
「デロリアンDMC-12」といえば、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の劇中でエメットブラウン博士(通称ドク)がタイムマシンにしてしまったクルマだ。40~50代の男性なら一度は『乗ってみたい』と憧れたことがあるはず。そんな夢を叶えながら、さらに未来永劫乗り続けるためにEV化してしまったオーナーを紹介する!
ウィークポイントの解消がEV化へのきっかけに
「いつかは“バック・トゥ・ザ・フューチャー”に登場したデロリアンに乗りたい」。子どもの頃から夢を抱きながら「どうせ作るんだったらカッコいいほうがいいじゃないか!」というドクのセリフに触発されて、デロリアンで電気自動車(以下、EV)を作ってしまったオーナーの藤井智康さん。
なぜEVなのかというと、デロリアンは燃料・電気系が弱く維持が難しい。そこで構造がシンプルなEV化を計画した。併せてCO2削減にはEVの普及が欠かせないと考え、2007年に〝デロリアンEV化計画〞がスタートした。
多くの人がEV化計画に共感、一大プロジェクトが動き出す
最初に着手したのがデロリアンの入手だ。2年間で8500台しか生産されなかった希少性から、走れる個体は除外する条件付きでクルマ探しが始まった。そこには藤井さんのデロリアンに対する愛情と、大量生産大量消費時代のなかで物を大切にする文化のあり方に対するメッセージが込められている。
Ver.3にアップデート! 急速充電機能も搭載
しかし困ったのは、藤井さん自身が文系中の文系と豪語するほど機械や電気の知識が乏しかったこと。そこで2007年11月、デロリアンEV化計画をブログ上で発表。参加メンバーの募集を開始した。
マツダのお膝元という風土もあってか、自動車整備の経験者や電気のスペシャリスト、製図が引ける人など、あらゆるジャンルの専門家の協力があり、2009年3月11日、改造申請を含めた車検に合格。国内で唯一のEVデロリアン(Ver.1)として、晴れて公道を走らせることに成功した。
その後、2回のアップデート(Ver.2→Ver.3)を経て進化。現在はi-MiEVシステムを搭載。200Vの普通充電のほかCHAdeMO(急速充電)にも対応するなど、市販EVに劣らない利便性や使い勝手が備わっている。
ちなみに満充電での航続距離は約100kmほど。再生可能エネルギーの普及が進まない日本では、電力を火力発電に頼る部分が大きく厳密には環境に優しいとは言いがたい側面もある。そこで藤井さんはプリウスPHVに太陽電池パネルを搭載した実証車と同じように、EVデロリアンにフレキシブルソーラーパネルを使い、走行中の太陽光充電が可能なプロジェクトも進行中だ。
どこに行っても目を惹く「EVデロリアン」が環境問題にひと役買う
EVデロリアンの撮影を兼ねて藤井さんの運転で広島市内をドライブしていただいた。ジウジアーロデザインらしい地を這うようなロー&ワイドなEVデロリアンが街中を走ると、羨望の眼差しが至るところから向けられる。途中、原爆ドームがある平和記念公園の近隣でガルウイングを開いて撮影していると、海外から訪日した観光客から驚きの笑顔で声をかけてくる(撮影は2019年7月)。
この注目度の高さは環境問題の提起にもひと役買っている。藤井さんはCO2削減を目的としたEVの普及や再生可能エネルギーの促進を目的に、ブログ「デロリアンEV化計画(https://delorean.tumblr.com)」で、愛車のEVデロリアンはもちろんEV普及に関するさまざまな出来事を綴っている。藤井さんの環境を意識した活動は、これからも続いていく。
■EVデロリアン 主要諸元
●ベース車両:デロリアン・モーター・カンパニー DMC-12(1981年製)
●全長×全幅×全高:4200mm×1860mm×1160mm
●車両重量:1260kg
●走行距離:8万6345km(取材時)
●駆動用バッテリー:交流330V/三元系リチウム16kWh
●モーター:永久磁石式(PM)同期モーター
●定格出力:25kW
●航続距離:100km(満充電時)
■詳しくはコチラ