長年のレース活動と共に進化してきたウェッズスポーツ
大手ホイールメーカー、ウェッズのスポーツブランド「WedsSport(ウェッズスポーツ)」。その歴史はモーターレースと共にある。1985年のグループAを皮切りとして、全日本ツーリングカー選手権、そして全日本GT選手権と毎年欠かすことなく参戦。現在は国内トップカテゴリのスーパーGT GT500でその名を馳せている。
そうしたレース活動で得たデータとノウハウを市販品向けにもフィードバック。より速く、安全に走ることにこだわり、軽さや強さ、耐久性といったアルミホイール本来の機能を追求したモデルを開発してきた。同社はクレンツェ、マーベリック、レオニスなどのドレスアップ向けのブランドも有名ではあるが、スポーツ派ユーザーからの支持が厚いのは、やはり圧倒的にウェッズスポーツなのだ。
中でも今シーズン注目を浴びているのが「SA-99R」と「TC105Xフォージド」。どちらもウェッズスポーツの2021年モデルであり、最先端のテクノロジーを詰め込んだ意欲作。しかし、実はキャラクターのまったく異なる2本である。今回はそれぞれの魅力と見どころを改めて紹介していこう。
細身のフィンスポークと立体フェイスを持つ【SA-99R】
冠したモデルは街乗り向けのスポーツホイールという位置付け。ストリートに映えるデザイン性と、確かな機能性をバランス良く両立させているのが特徴だ。
SA-99Rの9本のフィンスポークも、そうしたこだわりを象徴するような設計になっている。天面は先端に向かって細く絞り込まれ、リム付近で軽くフレアさせることで軽やかさと足長感を演出。一方で側面から根本にかけてはリブ状の段を設けてしっかりと剛性を確保した。ここは滑らかにえぐったサイドカット調のデザインになっており、視覚的にも軽さと強さが巧みに表現されているポイントだ。
センターは急激に落とし込まれた造形。どんな角度から光が当たってもくっきりと陰影が付き、メリハリのある表情が浮かび上がる。たとえリム幅の小さなサイズであっても、このディスクフェイスなら立体感を味わえるのが嬉しい。
軽量で高強度なリムを作り出すAMF製法を採用
1ピース鋳造というポピュラーなモデルながら、リム部分は「AMF(アドバンスド・メタル・フォーミング)」で作られている点も見逃せない。 これはリムを回転させながら熱と圧力をかけ、ローラーを使って伸ばして成型していく手法。イメージとしてはろくろを回しながら陶器を成型していく工程に近い。
結果、リムのアルミ組織が鍛えられ、密になって粘りのある強度を実現。だから従来の製法のリムに比べて厚みを薄くすることができ、大幅な軽量化にも貢献する。鋳造ホイールでありながら、鍛造ホイールに近いパフォーマンスが得られるのだ。
軽さ、強さはアルミホイールの命。ハンドリングや乗り心地にも深く関わってくる。またウェッズスポーツが掲げるコンセプト「より速く、しかも安全に」を達成するためにも、このAMFという新世代テクノロジーが使われている。
個性溢れる4つのカラー。リーズナブルさも魅力
カラーバリエーションは4種類。切削処理した天面をブラッククリアーでコートしたWBC(ウォースブラッククリアー)は、いわゆるブラポリ系。しかしほのかに青みがかった色合いが、ドレスアップ向けのホイールとはひと味違うスポーティな雰囲気を醸し出す。
渋さが際立つのはEJ-BRONZE(イージェーブロンズ)。ウェッズスポーツでは珍しいブロンズカラーの新規色で、さり気なくもアピール度高し。他のウェッズスポーツユーザーと違いを出すこともできる。
PSB(プラチナシルバーブラック)は陰影が鮮やかに出るハイパー系のシルバー。スポークやセンターまわりなど、立体的な造形美を強調できるのが強み。
ウェッズスポーツらしさを味わいたいならBLCⅡ(ブルーライトクロームツー)だろう。アンダーカット加工を施した上、ブランドのイメージカラーであるブルーで着色。スポークの奥にチラ見えする青いリングがお洒落なアクセントとなる。
サイズは15~18インチまで幅広くラインナップ。価格は15インチで1万9800円~、18インチでも3万1900円~と、SA-99Rのスペックからするとかなりリーズナブル。コストを抑えながらも、見た目だけでなく性能にもこだわりたい、街をスポーティに駆け抜けたいという人にはぴったりのモデルになっている。
名作が鍛造モデルになってさらに進化【TC105X】
スポーツホイールといっても、肩肘張らずに履けるのがSAシリーズのいいところ。スポーツカーのみならず、軽自動車やワゴン、セダンにも合わせられる。それに対して「TC(=Tough Connection)シリーズ」は、本気の走りにこだわり、少しでもタイムを削るために生み出されたレーシングスペックといえる。
中でもこのTC105Xフォージドはスペシャルな存在。ベースは2018年に発表されたTC105X。これは各部の駄肉を徹底的に削ぎ落とした10本スポークモデルで、N‒FLAMEと名付けられたデザインによって剛性も効率良く確保。リムはAMF製法で軽量&高強度化を果たし、鋳造製法の限界を極めたホイールとして話題を呼んだ。
そのハイスペックモデルを鍛造製法でリメイク。新たなCAE解析を元に、剛性・軽さ・精度といったすべての基本性能を向上させ、国内最高峰クラスのレーシングホイールと同じ加工機によって生産される究極の1本──それがTC105Xフォージドなのだ。
サーキットで得た新技術「AIR+α」が走りに効く
TC105Xフォージドの基本設計はTC105Xと共通。リム部に刻印されたFORGEDのロゴを除けば、外からの見た目で違いを感じ取れる部分は多くはない。しかしリムの裏側に注目。タイヤを組んでしまえば見ることはできないが、TC105Xフォージドのリムドロップ側面には、スリット状のえぐりが規則正しく並ぶ。
これが「AIR+α」と銘打たれたウェッズの独自技術である。効果は2つあり、まずは駄肉を減らすことによる軽量化。そしてタイヤのエアボリューム増加が挙げられる。簡単にいえば、ホイールを削った分だけタイヤに充填できるエアの体積が増やせるということ。その量は約200ml、コップ1杯分ほどだという。 エア量増加のメリットは、タイヤ空気圧の変化を抑えられること。走行中、タイヤ内の温度は摩擦熱によって上昇するのだが、それに伴って空気圧も上がる。するとタイヤのグリップ力が変わるし、トラクションのかかり方も変わってくる。またタイヤのたわみ量も変わり、操縦性や乗り心地に影響も出る。
そうした変化をマイルドに抑えてくれるのが、タイヤ1本あたりコップ1杯分増えたエア。普段の街乗りで体感できるシーンは少ないと思われるが、サーキットでは確かな効果があるという。より速く走るために空気圧をどう設定するか。その調整もやりやすくなるだろう。ウェッズスポーツが長年レースフィールドで培ってきた技術が、ここに生かされている。
18インチのみだが今後は10J以上のリムにも対応予定
リム径は18インチのみの4サイズ展開。必然的に履けるクルマも限られてくる。しかしTC105Xフォージドのターゲットはずばりサーキットユーザーだ。具体的にはランエボ、インプレッサ、Z33/34、R33/34GT-R、RX-7、80スープラあたりの旧世代スポーツカーがメインになるだろう。もちろんGRヤリスなど現行車に履かせるのもアリ。
また10J、10.5Jサイズも開発中(いずれも18インチ)。今後はワイドフェンダー車などにも対応が広がると同時に、ノーマルフェンダーでもトレッド拡大を狙いたい、ツラ具合をギリギリまで攻めたいというユーザーにも支持されそうだ。
カラバリはグレー系のEJ-TITAN(イージェーチタン)1タイプのみ。見る角度や光の当たり方によって表情を変え、3D感も高まる味わい深い色である。飾り気こそないが、TC105Xフォージドの機能美を引き立て、そして鋭い走りを予感させるフラッグシップモデルに相応しいカラーといえるだろう。
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