進化によって安全性は高まっているが……
テクノロジーの進化は人間に豊かな生活をもたらした。クルマも同様で、ひと昔前に比べると利便性や快適性、安全性や経済性が格段に向上しているのは確かだ。しかし進化が仇となり不便になった、なんてケースも少数だが存在する。その代表例を紹介したい。
1000kgオーバーが当たり前となった「車重」
クルマに限らず「新しければ新しいほど機械として優秀」といった考えは基本的に間違いじゃない。ただし、進化とトレードオフで失った面白さや魅力がスポイルされてしまったモノある。その筆頭といえるのがクルマの軽さだろう。
今も「ライトウエイト」と呼ばれるカテゴリーは若者を中心に人気を博している。しかし、かつては排気量が1600ccクラスなら車重が1tを切って当たり前。例を挙げればAE86レビン&トレノが900kg台の前半、ライバルと目されたワンダーシビックは800kg台の後半だった。
だが現在の同クラスは頑張っても900kgの後半、1tオーバーの車種だって決して珍しくない。車重の増加は安全性や快適性に強く影響しており、ボディ剛性の向上といったメリットもある。が、走りに関しては軽さが正義であることは否めず、最新のクルマが肩を並べるのは難しい部分だ。もっともクルマの速さは重量だけで決まらないし、ボディとサスペンションが大きく進化したことで、必ずしも軽快な乗り味が損なわれたワケではない。
気軽に交換できなくなった「タイヤの大径化」
続いては車重とも密接な関係がある、タイヤの大きさとそれに伴う出費について。日本がハイパワーのスポーツカー人気に沸いた1990年代の前半、280ps級のクルマでも純正タイヤは16インチ、1600ccクラスなら15インチが平均的だった。太さも16インチが225で15インチは195程度で、後でサイズアップしても1インチがせいぜい。
しかし現在のスポーツモデルはライトウエイトでも16~17インチが標準で、当然ながら価格も高く昔ほど気軽に「減ったから交換」とはいかなくなった。