ロールを抑え車体を安定させる
クルマ好きなら一度は耳にしたことがあるスタビライザー。サスペンションを構成するパーツのひとつだが、どのような役割を担っているのかご存知だろうか? 今回はクルマの足まわりと言われる領域のパーツ、走りを支えるスタビライザーについて解説しよう。
スタビライザーとは?
スタビライザーとは安定化装置のこと。クルマだけではなく船や飛行機などにもついており、外乱や操縦によって発生する不規則な揺れなどを抑える装置なのだ。最近ではスマートフォンや一眼レフなどで動画を撮影する際に手ブレを抑え、綺麗で滑らかな映像を撮影することができるカメラアクセサリーとしても、多くの人がスタビライザーという名称を耳にするのではないかと思う。
では肝心のクルマのスタビライザーについて詳しく解説しよう。
クルマに装備されるスタビライザーは走行する上で重要になる足まわりを支えるサスペンションシステムのひとつで、アンチロールバーとも呼ばれている。サスペンションシステムと聞けば察しのいい人ならどの辺に着いているのか想像できるのではないだろうか? そう、スタビライザーは左右のサスペンションを橋渡しするように繋げるかたちで装着されている。
クルマがコーナーに侵入する姿を頭の中でイメージしてみてほしい。コーナリング中の車体は遠心力によりどちらかに大きく傾くことになる。例えば右コーナーであれば右のサスペンションは伸び左側は縮む。それによりクルマが傾くことをロールするという。こうなることでタイヤの接地面積が左右で大きく変わるのだ。
スタビライザーで左右のサスペンションを繋げることによりスタビライザーの捻り応力と戻ろうとする反力がサスペンションに作用し車体の動きを制御することになる。これによりロールを抑え車体を安定させることができるのだ。
それでは左右のサスペンションを繋いで制御しているとはどういう構造なのか? それについても詳しく解説していこう。
スタビライザーの構造とは?
スタビライザーはコの字型の棒状のパーツで、左右のサスペンションをつないでいる。素材はばね鋼と呼ばれる金属でねじる力に対し反発する力をもたせたもの。トーションバーとも呼ばれており、スタビライザー自体はサスペンションとは異なるパーツでありながら、ばね鋼の反力を利用したねじり棒式サスペンションと作用は同じである。
スタビライザーそのものの構造は中実タイプと中空タイプがあり、中実タイプはローコストで製造できるほか、耐久性に優れ、ストロークの大きいサスペンションでもしっかりと機能するのが特徴。純正品はほとんどがこの中実タイプを採用しており、アフターパーツメーカーでも中実タイプを採用しているものもある。
中空タイプは比較的路面整備の行き届いたサーキットなどに最適なスタビライザーだ。その名の通り、スタビライザー本体がパイプ状になっており、軽量化に貢献する。一部のアフターパーツメーカーが採用しており、スポーツ走行向けとして人気が高い。
スタビライザーリンクロッドの役割
スタビライザーとともに、重要な役割を果たしているのがスタビリンク。正式名称はスタビライザーリンク、スタビライザーリンクロッドと呼ばれ、サスペンションやロワアームとスタビライザーをつなぎ、スタビライザーとの接続部分がボールジョイントだったり、ゴムブッシュだったりする。
純正のスタビリンクは標準車高に合わせて長さが設定されているため、セッティングでローダウンをした場合など、スタビライザーには常にテンションがかかった状態になるためスタビライザー本来の性能が発揮できなくなる。
その場合はアフターパーツメーカーからロッド部分を短くしたショートスタビリンクや、車高に合わせ自在に調整可能な調整式スタビリンクが販売されているので、ローダウン時にはぜひ車高に合わせたスタビリンクを装着し正しい性能を発揮させたい。
アフターメーカーのスタビリンクにはジョイント部分をピロボール式にしているものや、ロッド部分をジュラルミン製としたものなどが存在し、ダイレクト感や強度を向上させているものも存在する。
スタビライザー本体は純正のまま、サスペンションをローダウンしてスタビリンクのみ交換することでもコーナリングフィールの変化を楽しむことができる。また純正のスタビリンクでもボールジョイントの場合ブッシュやグリスの劣化などにより本来の機能を発揮しなくなった場合はぜひとも交換しておきたい。