無理やりにも程があるモンスターSUV
「やっちゃえ日産!」とは、こういうクルマのことを言うのではないだろうか。ベースは旧型ジューク。全長4.2mほどのコンパクトSUVのボディに、R35型GT-Rのパワーユニットを強引に詰め込んだモンスターである。それが「ジュークR」だ。
排気量3.8LのV6ターボエンジン「VR38DETT」は、試作モデルのスペックで487ps。後に登場した市販モデル(なんと市販したのだ!)では553psにパワーアップ。トランスミッションやドライブトレインもGT-Rから移植。「ジュークの皮を被ったGT-R」といっていいだろう。
スーパーカー並みのハイパフォーマンスを持つジュークR
スタイリングはノーマルのジューク……ではなく、前後やサイドのエアロパーツに加え、GT-R用の大きなタイヤを収めるオーバーフェンダーで迫力満点。見るからに普通じゃない雰囲気に作られた。
試作モデルの走行性能は、停止状態から100km/hに到達するまでに必要な加速タイムがわずか3.4秒と普通のジュークの高性能仕様の半分以下。最高速度は257km/h(2010年モデルのGT-Rはそれぞれ3.5秒、311km/h)と、スーパーカー並みのハイパフォーマンスだ。 筆者は実際に運転したことがあるが、スタートから瞬時に100km/hを超える力強い加速はもちろん、高速コーナリングの安定感もGT-R並みでSUVらしさはまるでなし。自分がどのクルマを運転しているのか忘れてしまうほどだった。
バケットシート2脚にロールケージ付きの本格的なマシン
インテリアはメーター、センタークラスター、そしてシフトレバーなどがGT-Rから流用されていたことを覚えている。
日産がなによりすごいのは、このジュークRを単なるショーカーではなく実走可能としたのに加えて、実際に市販されたことだ。日本円にして約5000万円と高価だが、メーカー自身がこれを少量生産モデルとして売ってしまったのだからまさに「やっちゃえ!」である。
ちなみに2015年には、エンジンパワーを600ps(GT-R NISMOと同等)へ引き上げ、エクステリアもリファインした「ジュークR 2.0コンセプト」が公開されている。
ジュークはその後フルモデルチェンジして新型に切り替わっている(日本未導入)が、元気な日産の象徴として新しいジュークRの登場に期待したい。