スピードメーターの仕組み
ところで、スピードメーターはどのように速度を感知して表示しているのだろうか。仕組みについて説明しよう。詳しくは後述するが、スピードメーターはJIS規格で作動方式を「機械式」「電気式」「電子式」の3種類、支持方式を「アナログ表示」「デジタル表示」の2種類としている。その他、さまざまな環境でもちゃんと作動するように細かく規定されている。
いずれにせよ、ほとんどの国産車では0~160または180km/hまで目盛りが刻まれている。最近ではR35型GT-Rのように340km/hまで表示されているものもある。表示デザインはさまざまだが仕組みは変わらない。少し乱暴な言い方をすれば「何らかの方法で一定の時間に対するタイヤの回転数を感知し、タイヤ外周の長さをもとにスピードを割り出している」のだ。
カスタマイズとしてタイヤ&ホイールを交換する際、タイヤの外径が変わらないように注意するというのは、できるだけスピードメーターに誤差が生じないようにするため。車検時には必ずスピードメーターと実際の速度の誤差を確認している。この誤差については実際の速度よりもメーターの数値のほうが早い速度を示していることが多いようだ。
スピードメーターの規格と種類
では実際にスピードメーターの規格と種類について説明しよう。先にも述べたようにクルマのスピードメーターはJIS規格で定められている。作動方式は機械式、電気式、電子式の3種類。支持方式はアナログ表示とデジタル表示の2種類。安全に公道を走るために必要な装置なので、表示速度の誤差や針振れの範囲、耐久性など細かい部分まで規定されている。ここからは作動方式についてそれぞれを解説する。
機械式
トランスミッションに差し込まれているワイヤー(フレキシブルケーブル)内部のシャフトが回り、メーターまで回転を伝える仕組みになっている。このフレキシブルシャフトの回転速度を磁石の回転などに伝えてメーターの針を動かす方式だ。最近のクルマではほとんど使われていない。
ちなみにスカイラインGT-Rで言えば、R32型は機械式であり、R33以降は電気式となっている。アナログ式メーターでは、機械式の場合20km/h以下では振れ幅が小さい。また、ケーブルをミッションからメーターまでつないでいることもあり、経年劣化によってトラブルを抱えることもある。とはいえ、R32型GT-Rを例に挙げれば、30万km以上何も問題はなくケーブル無交換だったという話もあるので、耐久性に問題はない。強いて上げれば、交換することになった場合の作業性はかなり悪く、メカニック泣かせである。
電気式
ミッションに取り付けられている車速センサーや車輪の回転センサーから電気信号(車速パルス)を送り、アナログメーターの針を動かすシステム。機械式より当然表示精度は高く、電気式は0~10km/hも高速時と同じ感覚でメーターの目盛りを刻めるのがメリットのひとつ。近年ではミッションに車速センサーを取り付けるのではなく、ドライブシャフトやハブベアリングなどのローターから読み込む「車輪速センサー」を採用するクルマも増えてきた。
電子式
車速センサーや車輪の回転センサーから車速パルスを送るのは電気式と同様。この送られた信号を電気的に計算して、速度をデジタル表示するのが電子式だ。針ではなく数字で表示する方式が多い。前進だけでなく後進時にも車速が表示される。
いずれの方式でも性能については細かく決められている。針振れの振幅は1km/h以下であること。指示誤差は20km/h時±3km/h、40~100km/hで時±2.5km/h、120km/h時±3km/h、140km/h時±3.5km/h、160km/h時±4km/h。耐温度性、耐水性、耐振性などもそれぞれの条件が決められているのだ。
また、耐久性については10万km走行に相当する試験後、試験前との変化について、最高目盛り値の5%以下であると定められている。
運転する際は毎回目にしているメーターだが、実は奥が深く、そしてかなり進化してきたことがおわかりいただけただろう。
将来のクルマのメーター
では今後、クルマのメーターはどのように変わっていくのだろうか。例えば、ようやく予約を開始し、この冬からデリバリー予定の日産アリアを見てみよう。運転席前には横長のパネルが広がっており、さらにセンターのモニターともつながりを持ったデザインとなっている。もちろん現段階では車速という情報は必要だろう。しかし、将来的にはメーターなど必要なくなるかもしれない。
自動運転が進み、自分で運転しないとなれば車両の情報など逐一必要なくなるからだ。その代わり、クルマを運転中(というか全自動で移動中)はかつてインパネだった部分にスマホの情報なり、素敵な風景の写真だったりが映し出されているのかもしれない。それは極論として、今後は今までと違った情報をインパネから得ることになるだろう。そうなると情報過多でインパネのスペースが足りなくなることもあるかもしれない。
いずれにせよ、今までのようにクルマの状態を知る、というよりも安全や快適に走るために必要な情報を得るためのインパネに変わるのではないだろうか。となると、クルマ好きにとっては少々寂しいものだ。速度に合わせて針が動き出す。この楽しさは味わえるうちに存分に堪能しておいたほうがいいかもしれない。
まとめ
まるで縁の下の力持ちとも思えるメーター類。普段あまり意識することはないが、クルマが動くためにはかなり重要ということがおわかりいただけただろう。特に警告灯などについては今一度確認してほしい。安全・安心にドライブを楽しめるよう、万全を期したいものだ。