マフラーを自分で交換する方法
純正マフラーからスポーツマフラーへの交換は、DIYで作業することもできる。ただし、安全・確実に作業を行うためには注意点がある。
交換手順は①純正マフラーの取り外し、②交換するマフラーの取り付けの2工程だ。整備工場やパーツ販売店では機械によってクルマを持ち上げるリフトを使って作業スペースを作ることができるが、DIYでは車体をジャッキアップして持ち上げ、さらにジャッキスタンドをかけて作業スペースを確保する。
ここで必ず守って欲しいのはジャッキスタンドを必ずかけること。
ガレージジャッキは油圧で車体を持ち上げるため、オイルにエアが噛んでしまうことなどによって適正な油圧がかからず、車体が少しずつ下がってきてしまう危険性があるからだ。
もちろんジャッキスタンドの設置場所にも注意が必要で、アスファルトなどの硬い路面の上でなおかつ平らな場所で使用する。その上で車体に記されたジャッキアップポイントにしっかりジャッキスタンドをかけて、車体が脱落する危険性がないかどうかを確認してから作業に入ることが大切だ。
ジャッキアップが終わったら交換作業に移りたいところだが、その前に下準備としてあらかじめやっておきたいのが、マフラーを固定している各ナットやビス部が錆びなどで固着していることがあるので、浸透性潤滑剤をスプレーして外しやすくしておくのもポイント。
もちろんジャッキアップしたクルマの下に潜り込んだときにマフラーなど熱をもった部品に身体が触れて火傷しないように、エンジン停止直後の作業は御法度だ。
マフラー交換作業の注意点とワンポイントアドバイス
マフラーの脱着にはラチェットレンチ&ソケット/スパナ/メガネレンチ/マフラーハンガープライヤーの用意が必要だ。マフラーハンガープライヤーがない場合はマイナスドライバーでも代用できるが、作業をラクに進めるためにもゴム製のマフラーハンガーにも浸透性潤滑剤をスプレーして外しやすくしておくと良いだろう。
あとは触媒の後方にあるパイプ接合部(フランジ)のフランジボルトを外し、車体後方のサイレンサーはゴム製のマフラーハンガーによってステーに引っかけられているので、マフラーハンガープライヤで押し出すように外せば純正マフラーの取り外しは完了だ。
ここから一気に取り付け作業を進めたくなるのだが、スポーツマフラーの多くは複数に分割された状態で梱包されていることが多く、取り外した純正マフラーのパイプレイアウトを参考に、配管の取り回しに間違いがないように床の上であらかじめ仮組みしておくことで、車体下に潜り込んだ際の作業性は格段に向上する。
ちなみに交換作業は、可能であればふたりで行うこと。ステンレス製とはいえ純正マフラーはスポーツマフラーに比べて重量があるため、ジャッキアップした車体下の狭いスペースで作業するのであれば複数人で行うことをオススメする。
さらにマフラーの接合部には隙間ができて排気ガスがそこから漏れないようにガスケットという部品が挟まっている。ついつい使用済みのガスケットをそのまま流用しがちだが、長年の使用でガスケットが押しつぶされて適正な厚みがなくなっていることも。そのため製品に同梱された新品ガスケットに必ず交換することが大切だ。
排気騒音規制以外にもさまざまな保安基準が定められている
スポーツマフラーを選ぶ場合どうしても音量規制にばかりに目が行きがちだが、じつは取り付け位置についても道路運送車両法の保安基準によって厳格化されている。
前項で触れたとおり、路面と接地する部分(タイヤ)以外、地面から9cm以上確保されていなければならないという最低地上高が定められている。
また、交通の安全を妨げる恐れがある鋭い突起物も禁止されており、バンパーから大きく突出していたり鋭く尖っている形状も保安基準不適合になる。
ほかにも有害物質を除去する目的で装備されている触媒をカットして、排気効率を高めるためにストレート化するカスタマイズも保安基準不適合となる。どうしてもエンジン性能を引き上げたい場合は、スポーツキャタライザー(触媒)に交換することで、排ガスの浄化性能を維持しながら効率の良い排気を可能にすることもできる。
いずれにしても保安基準に不適合な車両を運転したり改造に関わる施工をした者には、一定期間の車両使用の禁止、6カ月以下の懲役刑、30万円以下の罰金刑が課せられる。チューニングやドレスアップ目的でマフラーを交換する場合は、保安基準をしっかり理解しておくことが必要だ。
製品選びのポイント&オススメマフラーを紹介
・マフラーメーカーの選び方
純正マフラーからスポーツマフラーに交換する場合、製品選びのポイントはいくつかある。基本的には素材を含めた「好きなデザイン」「好みのサウンド」「保安基準に適合するかどうか」、そして「価格」だ。
なかでも一番重要なポイントは保安基準に適合した製品を必ず選ぶこと。基本的に大型カー用品店で取り扱いのある製品であれば問題ないが、自動車用スポーツマフラーの普及促進のために発足したJASMA(日本自動車スポーツマフラー協会)に加盟するメーカーから選べば間違いないだろう(一部、保安基準に適合しない競技車両用製品もあるので注意)。
その上でデザインや排気音の音質、費用・価格を総合的に考慮したなかで理想に近い製品を選びたい。
また、スポーツマフラーにも触媒から後方をすべて交換する一般的なスポーツマフラーのほか、後方のサイレンサーからテールエンドだけを交換するリヤピースマフラーもあるので、より優れた走行性能向上を目指すなら前者だし、ドレスアップがメインで走行性能向上はプラスα程度と考えるなら後者のリヤピースマフラーでも十分だ。
・ おすすめのマフラーメーカー
もちろんマフラーメーカーごとに製品のラインアップや特徴が異なるため、メーカー選びも重要になる。そこでオススメメーカー&マフラーを紹介する。
【FUJITSUBO/藤壺技研工業】オーソライズRM[インプレッサWRX STI GRB・GRF Aライン用]/9万7900円(税込)
スポーツマフラーの老舗メーカーとして知られる「FUJITUBO」。競技車両用エキゾーストシステムの製造も担うなど、日本国内外から信頼されている。この「オーソライズRM」は、軽量化と耐久性を追求したステンレス(SUS304)とチタンを採用。軽量砲弾型サイレンサーをストレート構造(一部車種を除く)にすることで、中高回転域で優れたパワー&トルクを発揮する。
【HKS/エッチ・ケー・エス】ハイパワースペックL2[レヴォーグ VN5用]/10万7800円(税込)
発売以来、絶大な人気を誇る「リーガルマフラー」をはじめスポーツカーからミニバン、軽カーまでさまざまな車種用に多彩なスポーツマフラーをラインアップするエッチ・ケー・エス。新型レヴォーグ用に登場した「ハイパワースペックL2」は、リヤピースマフラーでありながら純正比52%の軽量化を実現。さらに低回転域ではジェントルに高回転域では迫力のあるボクサーサウンドを楽しむことがでできる。
【BLITZ/ブリッツ】NUR SPEC CUSTOM EDITION VS[86用]/10万7800円(税込)
老舗チューニングパーツメーカーとして知られるブリッツ。ターボやスーパーチャージャーといった過給器からスロットルコントローラーなどの電子パーツまで幅広いアイテムを取り揃えている。「NUR SPEC CUSTOM EDITION VS」はテールパイプを自在に交換できるドレスアップ要素も高めたスタイリングも魅力。テールパイプはチタンカラーのVSR、ステンレスカラーのVS(写真の製品)、カーボンレッドの3タイプを設定する。
【KAKIMOTO RACING/カキモトレーシング】Regu.06&R Dualセンター付[WRX STI用]/19万2500円(税込)
「柿本改」で知られるチューニングパーツメーカーのカキモトレーシング。なかでもマフラーは高度な技術と高品質により数多くのチューニングカーユーザーが愛用している。「Regu.06&R Dualセンター付」はJASMA基準をクリアしながらもパワーアップはもちろん、刺激的なエキゾーストサウンドとレーシーなルックスを融合。低回転域から全域に渡り確かなエンジンレスポンスを発揮させる。
【GANADOR/マツ.ショウ】Vertex sports[フォレスターSK5用]/10万3400円(税込)
スポーツカーからミニバン、4WD車用まで幅広い車種ラインアップを取り揃えるガナドール。加工や溶接が難しいチタンマフラーの製造に早くから取り組み、ハイクオリティな仕上げにより数多くのユーザーから厚い信頼が寄せられている。フラッグシップの「バーテックス スポーツ」はスポーツマフラーの醍醐味である性能向上はもちろん、テールパイプの内側にスパイラルを描くP.B.S(パワーブーストシステム)を採用。エコ運転時は燃費改善にも貢献してくれる。
EV化が進むなかスポーツマフラーが楽しめるのは今しかない!
電動化が急激に進む自動車。10年後には内燃機関(ガソリンや軽油)で走るクルマの比率は今以上に減ることが予想されるなかで、スポーツマフラーのエキゾーストサウンドを聴きながらドライブが楽しめる時間は刻一刻と少なくなっている。すでにカウントダウンは始まっている。残された時間のなかで正しい知識を持って有意義なエキゾーストカスタムを満喫したい。