即答を重ねるレース現場からの未来
水素は燃焼のコントロールが難しく、これの対応が技術上の課題だと語ってくれたが、出力水準はガソリンエンジン車に近いレベルにまで達してきたという。24時間レースは、ピットインのたび長めのストップで入念なチェックを行い、戦績的には後方集団の域にとどまったが、無事に完走を果たし、所期の目標を達成する成果を上げることに成功。
ちなみに、補給する水素は、ピット裏のパドックを一部閉鎖して臨時の水素ステーションを設置。補給する水素は、化石燃料を使わぬ二酸化炭素無排出の発電によって作られた「グリーン水素」を、福島県から搬送してくる方法で対処していた。
水素燃料の場合、水素ステーションの設置というインフラの整備も大きな課題であり、内燃機関としての技術開発のほかに解決すべき問題も多くあるが、無公害のクリーンエネルギーとして将来に向けての可能性は高い。
トヨタが静岡県裾野市に建設を予定する実験都市「ウーブンシティ」でも、供給される電力は水素発電によるパワープラントであることが発表されている。もちろん都市交通の「足」として、FCVが想定されていることは言うまでもないが、今回、水素燃料車の可能性を示したことで、より水素を積極活用する構想が広がっていくことが推測できた。
水素自動車普及の可能性は、トヨタが開発を手がけたことで世の中に対する訴求力が一段強まったような印象を受けた。
振り返れば、2000年代中盤にレクサス、スープラでHVレーサーの試験投入を始めたトヨタが、10余年後にはHVプロトでル・マンを3連覇するまでに成長した足取りを見れば、水素燃料車が持つ可能性も無限であるように思えてしまった。
富士24時間レースを完走したカローラ・スポーツ水素燃料車は、こんな印象を強く与えていた。