開幕戦は計91台エントリー! 「ヤリスカップ」スタート
6月5日、富士スピードウェイでヤリスカップ(TOYOTA GAZOO Racing Yaris Cup 2021)が初開催された。2000年からのヴィッツレース(Netz Cup Vitz Race)、2013年からの86/BRZレース(TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Race)に続く、トヨタ車で参加できるワンメイクレースの第3弾だ。日本全国から91台がエントリーし、決勝レースでは令和の時代に相応しいハイレベルなバトルが展開。記念すべき最初のウイナーには、スーパー耐久や86/BRZレースでも活躍する大島和也が輝いた。
5ドアヤリスがベースでCVTもチョイスが可能
数あるモータースポーツでもやはりハードルが高いのがサーキットでのレース。しかしビギナーにも比較的手が届きやすいのが、コンパクトカーによるワンメイクレースだろう。その意味で、ナンバー付きのマイカーで参戦できるヴィッツレースが果たした役割は大きい。2000年から開始され、近年は全国を5地区に分けてのシリーズ戦に発展。21年間に累計で408大会が開催されている。
ただ2020年2月に国内販売が開始された4代目モデルから、ヴィッツに代わる新型として世界共通のヤリスという車名に変更。それに伴ってトヨタがサポートするワンメイクレースも「ヤリスカップ」に一新されることになった。参加できる車両はヤリスの5ドア車でカップカー専用グレードに限られるが、6速MT車のほかにCVT車も選択可能。つまりコンペティション専用とも言える3ドアのGRヤリスではない。
いわゆるスペックは他のカタログモデルと同等で、新たに開発された1.5L直列3気筒のM15A-FKSエンジンを搭載。最高出力は120ps(88kW)/6600rpmで、最大トルクは14.8kg-m(145N・m)/4800〜5200rpm。1.5L直列4気筒のヴィッツに比べて、それぞれ11psと0.7kg-mずつ上回っている。ボディサイズは全長3940×全幅1695×全高1470mm。これはヴィッツより35mm全長が短く、全高が10mm低い。 車両重量は6速MT車が1030kgでCVT車が1040kgと、ヴィッツよりも30kgの軽量化を果たしている。つまりヤリスは先代ヴィッツよりコンパクトでパワフルになっていると言っていい。
メカニズム面で違う仕様になるのは6速MT車にLSDが装着されないこと。またCVT車はサーキット走行時のみ、専用のトランスミッションコントロールCPUを装着することになる。 エンジンオイルクーラーもMT車に水冷式、CVT車に空冷式が最初から組み込まれている。サスペンションもカップカー専用で、ショックアブソーバー/スプリング/バウンドストッパーを新規に開発。リヤの減衰力は14段階に調整可能で、スプリング変更によって純正に対して15mmのローダウンとなっている。 6点式+サイドバーの構成によるロールケージも専用装備。サベルト製の6点式ハーネスも指定部品として統一されている。
なお、タイヤはグッドイヤーの「EAGLE RS SPORT S-SPEC」のワンメイクとなり、サイズは195/55R15。レース時はフロント2本が新品未使用の状態で予選から使用し、装着位置を含めて4本で走りきることが決められている。
気になる車両価格(税込み、以下同)は前述の専用アイテムをすべて標準装備して、6速MTが217万1100円、CVTが238万100円。架装メーカーオプションとして、TOYOTA GAZOO Racing Recorderが13万2000円で用意されている。全国どこのトヨタ販売店でも購入可能だが、カップカーは専用のベース車両をトヨタカスタマイジング&ディベロップメントがレース専用装備を架装する完成車両のため、持ち込み登録となる。すでに300台以上のオーダーが集中しているとのことで、今から注文しても納車までには相当の時間がかかりそうだ。
カップカーの撮影に協力していただいたのは、コンソレーションで優勝した岩岡万梨恵の810号車。長野トヨタのマシンで、ペトロナスもスポンサーになっている。長野トヨタの伊那店・サービス課の宮原隆之さんによると「弊社は社長の方針で、以前から女性の社会進出・活躍をサポートしたいとのことで、ヴィッツレースに出場する女性ドライバーのサポートを続けてきました。今年からそれをヤリスカップ に変更するにあたり、岩岡さんを起用することにしました。今回はお客さまも2台参戦しているので、合計で3台のサポートになります」とのこと。