BMWはiXで次世代EVの新しい姿を提案
BMWが、電気自動車(EV)の充実を進めている。最新のEVはi4で、Mスポーツも用意されている。もう一台はiXだ。こちらはSUV(スポーツ多目的車)のEVである。ただし、SUVのEVにはほかにiX3もある。
欧州車EVの先駆者として誕生したi3
BMWは、2013年にドイツメーカーとして先駆的にEVの導入を始めた。それがi3だ。以来、改良を重ねながら8年間販売を続けている。日産リーフがすでにモデルチェンジをしていることからすれば、同じ車種を長く販売し続けている印象があるが、そもそも欧州メーカーはひとつの車種を長く売る傾向があるので珍しいことではない。
i3の発売を前にBMWは丹念にEVの将来性を調査した。EVの理想像とは何かを考え、メガシティビークルという概念を打ち立て、MINIの実験車を多数製作して世界で実証走行を数年間続けた。そのうえで誕生したのがi3だ。
EVは、1充電走行距離を伸ばそうとすると駆動用のリチウムイオンバッテリーを大容量搭載しなければならない。それによって車両重量が増加し、バッテリー量が増えた割には距離が伸びにくくなる傾向がある。
そこで都市部で利用するEVという商品性をまず打ち出し、それがメガシティビークルの言葉に表れている。大都市のクルマという意味だ。同時に、カーボンファイバーを使った超軽量車体骨格を設計開発し、EVでありながら1.5トンを切る車両重量を実現した。同時に自然素材やリサイクル素材を使った内装を採り入れている。EVのひとつの象徴としての姿を打ち出したのだ。
また、車載のリチウムイオンバッテリー量を制限しながら、もっと長距離移動したい消費者のためにガソリンエンジンを発電機として活用するレンジエクステンダーも車種構成に加えた。こうして改良を加えながら8年におよぶ実績を踏まえたうえで追加したのがiX3とi4だ。既存のエンジン車であるX3と4シリーズを基にした量販EVになる。
EV時代になっても“駆けぬける歓び”を徹底追求
一方、iXはさらに次世代のEVの姿を模索する新しい概念の車種である。そもそもEVを市販する際にメガシティビークルの研究を通じi3が生まれたように、新しい世代のEVを構想する#NEXTGen2020の概念を体現したEVである。こちらはiNEXTというコードネームで開発が進められた。かつてのメガシティビークルのようなことだろう。したがって、iXは次世代EVであるというだけでなく、5Gを使った通信の活用なども含まれる。
さらにBMWは、企業スローガンである「駆けぬける歓び」を新たな水準へ引き上げる試作車が試走を重ねているとも公表している。モーター駆動のEVになればどれも同じという、短絡的な発想を一蹴する姿勢だ。15年ほど前に水素エンジンに見切りをつけEVに集中するBMWは本気でEVと向き合っている。そしてEVの奥深さを追求しようとしている。電動化を、モーターを使っていればハイブリッド車(HV)も電動車だなどといって既存の概念にしがみつこうとする日本のメーカーとは雲泥の意識水準である。