減速帯として機能するカラフルな模様
6月20日(日)にFIAフォーミュラ1世界選手権シリーズ第7戦として、F1フランスGPが開催される。その舞台となるポール・リカール・サーキット。設立は1970年。南仏の都市マルセイユの東に位置するル・カステレ村にあり、長らくF1が開催されていた。フランスの酒造メーカー創業者の名が冠せられたこのサーキットは、1990年を最後に2018年までF1を開催していなかった。
その間にコースは大きく改修され、2002年に現在の独特のビジュアルを持つ姿に生まれ変わった。そしてその改修後、2018年のF1フランスGP以来、今回が2度目の開催となる。
時計回りで使用されるコースは、高低差は大きくはないが微妙な上りと下りが設定されている。ホームストレートは下り、小高い小さな丘となるエス・ドゥ・ラ・ヴェルリー(1-2コーナー)から、ヴィラージュ・デュ・カン(5コーナー)までさらに緩やかに下る。ヴィラージュ・ドゥ・ラ・サント・ボーム(6コーナー)を立ち上がると、リーニュ・ドロワット・デュ・ミストラル(ミストラル・ストレート)と呼ばれる1.8kmものストレートが続く。ミストラルとはこの地方特有の強い北風のことである。そのストレートの途中にはシケインが設けられ、その後若干上りとなる長いストレートの後にはクーブ・ド・シーニュと呼ばれる超高速コーナー。さらに下りながら右へ巻き込むようにドゥブル・ドロワット・デュ・ボーセ、そこから上ってヴィラージュ・ドゥ・バンドール(12コーナー)で下り、鋭角なヴィラージュ・デュ・ポン(最終コーナー)を抜けてホームストレートに戻ってくる。
コースサイドに「青」「赤」ペイントの意味とは?
コース外の縁石を乗り越えた先のコースサイドにペイントされている青、そして赤、さらには白のラインが特徴的な縞模様は、コース改修の際に作られたもの。テストコースとして使用することも想定したコースとなっており、コースの使い方としては、さまざまに変更が可能で最大167パターンとなるという。
そのテストコースとしての使用も考えての工夫。通常のサーキットではコース外のエスケープゾーン(ランオフエリア)にはグラベルベッド(土や砂利)やサンドトラップ(砂)、グリーン(芝生)といったスペースが設けられ、コースアウトした車両がそういったグラベルで車両を減速させて、さらにその先にあるスポンジバリアやタイヤバリア、そしてガードレールで車両を止めるような構造となっている。コースアウトした車両が、そのまま砂利に埋まって再スタートできなくなってリタイアしたり、救出に時間が掛かったり、コースに復帰した際にコース上に砂利をまき散らしたり、というデメリットがある。最近ではバージアスファルトという舗装されたエスケープゾーンも多くなっている。
ポール・リカールのエスケープゾーンに替わって作られた縞模様も、グラベルなどと同等にコースアウトした車両を減速させるような仕組みとなっている。コース脇にまず青いラインがあり、さらにその奥に赤いラインが引いてある。
それぞれが摩擦係数の高いアスファルトとなっており、青よりも赤のほうが荒目。コースアウトした際の車両の減速をしつつも、コースへの復帰を容易にしている。
だからこのシマシマ、見た目できれいで、それでいてコストもかからず、レースにもあまり影響を出さない、とても高機能な模様なのである。