「伝統」のスカイラインか「高級」のISか
国産のプレミアムセダン市場が面白くなっている。まず、2020年秋に2度目のビッグマイナーチェンジを受けたレクサスISの評判がすこぶる良い。
いずれも現行型としてデビューしてから7年以上になるが、良い改良を重ねてきたように思う。冷え込んで久しい国産のセダン市場と異なり、ドイツ御三家のセダンはSUV全盛にあってもなお一定の人気を保っている。その理由はブランド力もあるが、見た目の格好良さと「本物」を感じさせる走行性能の高さだ。日本を代表するプレミアムセダンは、改良を重ねた結果「本物」の乗り味が出せるようになったのだろうか。ISにもスカイラインにも純ガソリンエンジンのスポーツグレードが用意されるが、これからの時代を見据えて今回は両者ともハイブリッドで比較してみた。
初出:CARトップ2021年4月号
レクサスIS300h:作り手の思いの良さが伝わってくる
首を傾げたくなる国や都の方針とは関係なく、オレ自身はガソリンエンジンに電動トルクをプラスしたハイブリッドは今、そしてこれからも本命になると強く感じている。
今回試乗したレクサスISはハイブリッドの300hで、まずは見た目の変化が好印象。レクサスの象徴、スピンドルグリルを良い感じに際立たせながら、上質さとスポーティさを上手く高めている。圧巻だったのは、峠道を軽く流したときの走りの良さだ。
この走りの良さをもたらしているのは、デビューが2013年とは思えないほど強くてしなやかになったボディと、そのボディに合わせ込んだセットアップの巧みさだ。ただ単にボディ剛性を高めただけではなく、ボディのしなりや捻れに上手く反応する足の調律が巧くなった印象だ。今回のISはホイールナットをボルトに変更したというが、オレの経験上、そこはいくら変えても走りはあまり良くならない。モデューロの開発でも散々やったから良くわかるが、ボディと足に合った剛性や重量配分を持つホイールを履かせることのほうが大事で、ISはそのあたりのバランスも良いはず。
日産スカイラインハイブリッド:わかりやすいスポーツ性はとても良い
国産プレミアムセダンのもうひとつの雄、スカイラインGTに乗ると、わかりやすいスポーツ性がとても印象的だ。ボディにも足にもビシッと引き締まった堅牢感があり、無駄な動きを排除した雰囲気で、いかにも走りを重視したセッティングであることが伝わる。
まとめ:本物のプレミアムセダンに望むこととは?
話をまとめると、総じて両者ともになかなかに個性的で、とても良いプレミアムセダンに仕上がっていると評価できる。しかし、本当の意味で「本物」のプレミアムセダンになっているかどうかは、まだわからない。