実車のような手順で製作されたマシン
「メンバーの中には、私を含めて数人の工業デザイナーがいました。その中のK氏がスケッチを制作し、それをもとに私がラフなスケールモデルやCGを作って検討。ある程度の形を決定しました。最初はティーポ33ストラダーレのチームのように、自分たちで原型からFRPボディの製作までをやるつもりでしたが、時間もないですし、それぞれ仕事を抱えていたこともあり、自作は断念。改めてFRP業者に発注することになりました」。
「詳細図面等の制作管理は私が行いました。まず、カウル等を外したベース車をFRP業者に運んで、そのシャーシに木と発砲材で原型を作ります。細かいラインやディテールは実際に形を見ながら調整していきました。原型ができたら雌型を造り、FRPのボディを製作。当初はFRP自体に色を付け、磨いて仕上げるつもりでしたが、完成したFRPパーツはパテ等で修正する必要があり、磨き仕上げは断念。塗装仕上げにすることになりました」。
「ボディカラーの塗装は、FRP業者に頼みました。次に完成したFRPパーツを別の工場に運んでフィッティング作業をしました。ベースのシャーシにサブフレームを組んで、FRPのボディが載せられるようにするのと、ヘッドライト・テールランプ等の補器具を組み込んでもらいました。フィッティングを頼んだ工場は、他にもK4GPの車両を造ったことがある経験豊富なファクトリーでしたので、細かいことはお任せでした。でも、この作業が一番大変だったようです」。
レース前日に仕上がったマシンの注目度は抜群!
出来上がったときの感想についてはこのように話してくれた。「フィッティングが済んで、完成したときは興奮を抑えられませんでしたね。想像はしていましたが、思ったより出来がよく遠目では本物なのでは? と思うほど、形のバランスがよかったです。他のメンバーも感想は同じようで、みんな興奮していました」。
「ステッカー等で仕上げたらさらに雰囲気抜群で、製作陣一同万歳したい気持ちでしたね。ただ、レース車両なので公道にて試走することができず、サーキット走行に不安を抱いていたのも正直なところです。最初にK4GPでお披露目したのはレース前日の練習走行でした」。
「当然注目度は高く、カーグラTVの取材も受けました。オリジナルの車両で参戦していた由良拓也さんからも、よく出来てるってお褒めの言葉をいただいたそうです。残念ながら私はその場にはいませんでしたが……。成績は途中でカウルを壊したり、いろいろありましたが何とか完走。レース後、その年のクルマ仮装賞をいただきました」。
アルファロメオ好きにとってティーポ33という車名は、いつの時代にも特別なものとして捉えられてきた。世界一美しいクルマのひとつとして知られるティーポ33ストラダーレのみならず、1975年シーズンに8戦中7勝してアルファロメオに悲願のチャンピオンシップをもたらしたティーポ33/TT12も、同社の輝かしいヒストリーを語る際に忘れることのできない存在だ。 よくできたレプリカは、本物のカッコよさを後世に伝える役割を果たしてくれるので、マツバTT12が再びサーキットで走ることに期待しよう。