限定車イコール完売ではない!
一般的に、クルマの限定モデルは希少性や話題性もあって「発売、即完売」が多い。特に近年のSTIブランドの限定車はリリースすればあっという間に売り切れるイメージが強い。だがこれまでひと口に限定と言っても、完売したモデルもあれば、さまざまな事情で売り切ることができなかったモデルも存在する。今回は人気、不人気含めて、国産の限定車について振り返ってみることにしよう。
初出:CARトップの記事を改稿
スバル・インプレッサS201:限定300台
2000年にデビューした、初代インプレッサをベースとしたSTi入魂のチューニングカー。販売期間は限定ではなかったがおそらく100台くらいしか売れなかった(編集部の独自調査による)。売れなかった理由はあくまで推測でしかないが、ちょっとアクの強いデザインが原因ではないだろうか……。
プリンス・スカイラインGT:限定100台
黎明期の自動車はどれも特別限定車のようなものだった。公式コメントとして特別限定車を発表しパンフレットを配布した最初のクルマは、1964年に100台だけ限定生産され、5月に発売されたプリンス自動車のスカイラインGTだろう。
NISMO 270R:限定30台
ニスモ270Rはニスモの創立10周年を記念したS14シルビアK’sをベースにしたコンプリートカーで1994年に登場。270psにパワーアップされたエンジン、強化された足まわり、エアロパーツなどを装着していた。32台が生産されたという説もある。現在中古車サイトでも滅多に見かけることがないので、幸運にも手に入れられた方はラッキー?
マツダ・ロードスター25周年記念車:限定25台(国内)
2014年、3代目ロードスターのRS RHTをベースにソウルレッドプレミアムメタリックの外装色、オフホワイトのインテリアに加え、バランス取りされたエンジンを搭載した限定モデル。世界限定1000台のうち、日本割り当て分は25周年にちなんでたったの25台。Webで先行予約受付を行なったが、予約開始わずか数分で売り切ったという逸話を持つ。NC型最後の限定モデルだった。
NISMO R34GT-R Z-tune:限定20台
2002年、日産R34スカイラインGT-Rの生産が終了。2005年にニスモからリリースされたのがニスモR34GT-R Z-tuneだ。走行距離3万km以下の中古車をベースに、車体を分解しボディ補強などを施しながらハンドメイドで組み立てられた。専用チューニングが施された2.8Lエンジンを搭載していた。
19台が製作されたと言われているが、中古車市場では滅多に見かけたことがない。その後ニスモよりZ Tune仕様のバンパーとフェンダー、ボンネットが市販されており「Z-Tune」仕様は定番で、R34オーナーにとっては人気のカスタマイズと言えるだろう。
ホンダNSXタイプR GT:限定5台だったけど……
NSX-R GTは全日本GT選手権(当時)での戦闘力向上のために必要な外装パーツを装着したホモロゲーション取得モデル(価格は税込5000万円)。リヤハッチガーニッシュ、カーボンフロントロアスカート、カーボンリヤロアスカート、カラードサイドエアインテーク、フルスケールメーター、ABSが標準装備とされた。
2005年2月22日〜3月22日のオーダー期間が設定され5台限定。オフィシャルのプライスリストには「販売台数を満たしたら、オーダー期間内でも販売を終了致します」と書いてあったが、ホンダはすぐに売れると思ったのだろうか。実際売れたのはたったの1台。いくら限定モデルとはいえ、5000万円はいくらなんでも高すぎた、ということだ。
上記プライスリストには「NSXタイプR GTは特別専用設計上、1.アプローチアングル不足によるロアスカート破損・損傷の恐れがあります。2.牽引フックの設定はございません」とも書いてあった。横からみれば「そりゃそうだよな」という出っ歯形状ではある。また、前述の「リヤハッチガーニッシュ」とはエンジンのエアインテークダクトのことを指すが、実際にはエンジンと繋がっていないことが写真からもわかる。だから、ガーニッシュということか……。
ちなみにホンダでは、世界で1台しか存在しないこの車両のために、カーボンバンパー製作用の型を残しているという。買った人もすごいが売ったホンダもすごい。まさに空前絶後、いろいろな意味でもう二度と出てこないモデルと言える。