スポーツグレードも存在していた!
雰囲気としては日本の軽自動車。それも初期のころのアルトやミラといったところ。その前後のチンクエチェントたちとは共通するところはまったくと言っていいほどなかったが、イタリアではチンクエチェントの再来というよりもパンダの後継車といったほうがよく、デザインはスクエアで不思議な形をしていたし、インテリアも初代パンダを思わせるようにユニークなものだった。
ただ、安っぽいところは単に安っぽいだけで、イタ車になりきれなかったのも事実。当時イタリアでもそこそこ見かけたが、無造作に路駐されているものが多くボディも汚いものばかり。単なる実用車で足として割り切っていた感じは強かった。
ただ、このチンクエチェントにはスポルティングという、ファイヤーエンジンと呼ばれる1.1Lの55psを発生する直4OHCを積んだ上級モデルがあったし、これをベースにエアロを装着したスポルティング・アバルトもけっこう精悍で見応えはあった。
日本にも上陸していたチンクエチェント・トロフェオ
さらにトロフェオと呼ばれるワンメイクラリー参戦車。ベーシックグレードにキットを装着して仕上げるものだが、現在のチンクエチェントのアバルトに通じるような粗野で凶暴な感じが漂っていて、クルマ好きの心には強烈に刺さった。
ただ、いずれのグレードも正規輸入はされず並行輸入のみ。そのなかでもスポルティングが一番多く、ノーマルやトロフェオも台数は少ないが日本に上陸しているし、中古車市場ではごくたまに見かけることがある。
チンクエチェントの上級モデル「セイチェント」というモデルも存在した
丸くて可愛いチンクの間にあった、四角いチンクエチェント。FIAT500に対して上級モデルとしてFIAT600(セイチェント)があったように、3代目チンクエチェントにも兄貴分としてセイチェントがあった(ベースはチンクエチェント)。
チンクエチェントとセイチェント、当時のフィアットとしては力を入れていたような、入れていないような中途半端な感じとはいえ、最終的に台数はけっこう売れたようだが、とにかく華がなかった。
クルマとしてはけっこう面白いものがあっただけに、変にチンクエチェントと名乗らず、別のラインとして登場していればまた違ったかしれない。また、今改めてそのコンセプトを蘇らせてみるのも面白いかもしれない。