第2世代GT-Rオーナーの実情をアンケート調査
1989年に「グループAで勝つため」に誕生したR32スカイラインGT-R。それに続くR33、R34を含めた3モデルは「第2世代GT-R」として、今なお人気を集めている。それどころか、現役当時よりも中古車相場は上がり、「25年ルール」もあって海外への流出も激化している状況だ。そんな中、実際に第2世代Rを所有しているオーナーはどのようにカーライフを楽しんでいるのだろうか? 販売当時、GT-Rと言えばチューニングを楽しむ人が多かったが、今はどうなのだろう? 以前紹介したエンジンまわりに続き、今回はもっと身近な「足まわり」周辺、ホイールやタイヤなどについて調べてみたい。今回も2020年に富士スピードウェイで開催された「R’s Meeting」において主催のGT-R Magazineが集計した愛車撮影会の参加者アンケートをもとに考察していく。同イベントは毎年恒例で全国から2000台以上のGT-Rが集結する、日本最大級のGT-Rイベント。恐らく日本のGT-Rオーナーの縮図が見えてくるはずだ。
経年劣化に悩むRについておさらい
今なお人気の第2世代GT-Rとはいえ「経年劣化」に逆らうことはできない。300万円とも言われるオーバーホールや、さらに上を行く金額が必要になるボディのフルレストアを行うユーザーも多数いて、かなりシビアな状況である。特にR32に至っては半数近くがエンジンのオーバーホールもしくは載せ替えを経験している。以前にもお伝えしたように、年数だけでなく走行距離も総じてかなり伸びている。
クルマは機械である。経年劣化だけでなく、走れば走るほど各部は痛んでもくるだろう。GT-Rオーナーの中には、もう愛車を動かさずに大切にガレージに保存したいと考える方もいる。しかし、GT-Rであるがゆえに、最後まで「走ることを楽しみたいという方が多いのも事実。
装着しているタイヤ銘柄は?
そこで消耗品であるタイヤにはかなりこだわりがあるように見える。R32~R34それぞれの型式で、割合こそ少し変わるとはいえ、ブリヂストン(BS)、横浜ゴム(YH)、ダンロップ(DL)が上位を独占している。スポーツモデルとして、しっかりパワーを路面に伝えるため、グリップ力や耐久性、排水性も含めて高性能なモデルを求めているとわかる。当然各メーカーの中でも、高性能モデルが好まれているのは言うまでもない。ここ数年、ミシュランの上位進出が目覚ましいのは、性能のよさだけでなく日産のワークスチームである「ニスモ」がGT500でミシュランを装着していることも理由のひとつと推察する。やはりGT-Rはレースとは切っても切り離せないのだ。
この「高性能モデル」を好むがゆえ、R32はホイールのインチアップが余儀なくされている。近年、純正の16インチのままではちょうどいいサイズが各モデルにラインアップされていない場合が多いのだ。それでも純正ホイールにこだわりたいという方は、少しグレードを落としたタイヤを選ぶ。また、当時のパワーやボディのヤレを考えると、あえて最先端のハイグリップを履かないという選択肢もある。それぞれのオーナーの好みや日頃の使い方によるものだ。
どんなホイールを装着している?
さて、ホイールに目を向けてみよう。サイズは総じて18インチが多い。選択肢が多いだけでなく、前述したとおりタイヤのためのチョイスとも言える。ルックスやエンジンまわり(タービンなど)は純正を好むユーザーが多いGT-Rだが、ホイールに関しては社外モデルを好む傾向にあるようだ。ホイールの純正比率はR32が23.6%、R33が9.9%、R34が6.3%である。純正アルミホイールで製造廃止になっているのはR32の標準のみ。そう考えると、仕方なくではなく積極的にホイール交換を望んでいると考えられるだろう。
では人気モデルは何か? こちらも明確に上位が決まっている。レイズ、BBS、ニスモの3強だ。R32とR33はレイズがそれぞれ21.8%と24%という装着率。中でもVOLK RACING TE37シリーズが圧倒的。6本スポークの武骨なデザインや軽量化や性能に対するメーカーのこだわりが、GT-Rにマッチすると考えられている。
2位のBBSはR32が17.3%、R33が18.3%とこちらもかなり人気。R32の純正ホイールがBBS製であったということ、王道のメッシュデザインが固定ファンを獲得していると思われる。
R34はZ-tuneの影響でニスモが人気
さてそんな第2世代GT-Rのホイール事情で、少し趣が違うのがR34だ。レイズやBBSを押しのけて、ニスモがシェア37%を独占している。こちらはほぼ「LM GT4」で、ニスモ大森ファクトリーのマシニングロゴバージョンが圧倒的に多い。「第2世代GT-Rは純正のルックスを好む」と先に述べたが、実はR34に限ってはニスモのZ-tuneエアロ装着率も高い。それだけ限定車として誕生したコンプリートカー「NISMO Z-tune」のインパクトは強く、GT-Rファンの心を鷲づかみにしたのだろう。
装着しているサスペンションは?
最後にサスペンションについても考察したい。純正比率はR32が12.7%、R33が7%、R34が9%となっている。コイルスプリングもショックアブソーバーも走ればヘタるし、年数が増えるほどこれまたヘタる。しかし、純正部品はほぼ製造廃止であり、今年の5月現在でR32のリヤショック、R33のリヤショック、R34の前後M-spec用ショック、フロントコイルスプリングのみ。これでは交換のしようがない。そこで社外のアイテムが好まれている。各社純正形状のタイプも近年ラインアップしてきているが、せっかく交換するのなら車高調にしたいという方が多いようだ。とはいえさすがにベタベタのシャコタンにするのではなく、あくまで走行性能優先、走りに合ったセッティングにしている。
まとめ:アフターパーツがGT-Rオーナーを支えている面も
パワー系だけでなく、足まわりに関しても純正部品の製造廃止が進んでいる。しかしニーズがあれば供給もある。純正で直しようがないものは、たいがい社外パーツが開発されている。もちろん、社外品がなくて困っている部分もあるが、それもプロショップやチューニングメーカーがなんとかしようと、現在もなお開発を続け工夫を凝らしている。「GT-Rに乗り続けたい」と強く願うオーナーは日頃のメンテナンスに気を使っているし、「GT-Rに乗り続けたいと思うユーザーを可能な限りバックアップしたい」とアフターメーカーやプロショップが全力でサポートしている。R32の発売から32年。今なお第2世代GT-Rはチューニング界の、そしてクルマ好きの中心を担う存在なのだと改めて思う。