日産プリメーラ・オーテックバージョン
日産自動車の特装車部門として1986年に設立されたオーテックジャパン。現在は独自のコンプリートカー以外にNISMOロードカーの企画・開発を行うなど、日産カスタマイズの最前線基地としての役割を果たしている。
ただ、通常の量産車では飽き足らないニーズを満たすというコンセプトは同じながら、創業当時は今の日産のラインを使った量産性の高いモデルではなかった。開発から生産までオーテックジャパンが請け負い、エンジンから足まわり、ボディに至るまでスカイラインの父である櫻井眞一郎氏を軸とした、開発陣のこだわりが投入された本当に特別なモデルであった。
1988年のR31スカイラインを皮切りに数多くのコンプリートカーが発売された。そして櫻井氏在籍時代の最後を飾ったモデルが、1994年11月にJTCC(全日本ツーリング選手権)参戦記念モデルとして発売された初代プリメーラ・オーテックバージョンだ。
エクステリアは専用フロントスポイラーと大型リヤスポイラー、専用グリル(欧州仕様用)を装着して差別化。エンジンはファインチューンされ、専用エキマニを組み合わせることで150psから180psにアップ。クロスミッション化(T4用)、専用サスペンションなどを採用。そのほかタイヤを15インチへと大径化、リヤシート後方に補強プレートを追加する(トランクスルー廃止)など、P10型プリメーラのパフォーマンスを底上げしていた。
限定400台で、FFセダンとして名車中の名車と誉れ高いプリメーラ・オーテックバージョンなのだが、雑誌で取り上げることが少なくレアキャラなのはなぜだろうか?
日産マーチ12SR
3代目マーチに設定されたスポーツグレード。開発はオーテックジャパンが担当し、2000年代の同社の最高傑作と呼ばれるほど高濃度なカスタマイズが施されたピリ辛マシンだ。
ショートストロークエンジンである1.2Lをベースに専用ピストン/カム/バルブスプリング/コンピュータが投入され、排気系の高効率化。加えて20mmローダウンする専用サスペンション、パフォーマンスに伴うボディ補強などトータルで気持ちいい走りを磨き上げている。さらに2005年の中期以降のモデルはエキマニ、ポート研磨が加えられ、スタビ径の見直しやフロントブレーキの大径化、ボディ補強が追加など、「走・攻・守」の性能が引き上げられている。
前期型は高回転でパンチがあり、中期型以降は低中速トルク重視で扱いやすさを加味。速さとトータル性能でいえば後期のほうが上だが、回して気持ちいいのは前期(前期は108ps、後期は110ps)。また、ホットハッチらしいスタイルの3ドアは前期しか選べないため、選択は悩ましいところだ。速さを軸としたスポーツ性ではなく、使い切る楽しさに特化したマーチ12SR。メカチューンならではの高回転まで弾けるような官能フィールと人車一体感ある走りは今こそ味わっておきたい。
スバル・レガシィRS-RA
スバリストから絶対神と崇められるスバル最強のコンプリートカー「STI Sシリーズ」。その元祖といえるモデルが初代レガシィに設定されたモータースポーツ競技用車両であるRS-RA。RAは「RECORD ATTEMPT(記録への挑戦)」の意味で、これはスバルがレガシィで挑んだ「10万km世界速度記録」に由来するものだ。このマシンメイクは創立したばかりのSTIが担当した(ボディサイドにSTIのステッカーが貼られるのがRAの証)。
エクステリアは標準車と同じだが装備は簡素化。エンジンは鍛造ピストンや高耐圧コンロッドメタルを組み込んで高出力化に対応。さらに匠の手により、回転部のバランス取りや吸気ポートの研磨&段付き修正などが施され、高耐久でありながら高回転まで力強くシャープに吹き上がるようにファインチューンが施されている。スペックはRSと変わらない(220ps/27.5㎏-m)が、乗り比べるとフィールの違いは歴然だった。
そのほかサスペンションは強化、パワーステアリングのレシオを15:1から13:1へとクイック化するなど、ラリーやダートラで戦えるアイテムが盛り込まれていた。1989年の発売当初は月産20台の受注生産モデルとしてスタートしたが、一定の人気を集めたため翌年からはカタログモデルに昇華。初代の生産終了まで生産し続けられたRS-RAは、STIの実力を競技ユーザーに知らしめたエポックメイキングなクルマでもあった。