顔面スワップの歴史にまた新たな1ページ
「ジムリイ」を知っているだろうか。JB64ジムニーのフロントマスクを備えたエブリイのことだ。いわゆる顔面スワップを施したカスタム車両なのだが、これがいま、密かに話題を呼んでいる。SNSやYouTube等にちょくちょく出ているので、試しに検索してみてほしい。今回はそんなジムリイの人気の秘密に迫る。
そもそも「顔面移植」とは?
ちなみにカスタマイズの世界では、こうした顔面移植の例は少なくない。S13シルビアの顔+180SXのボディの「シルエイティ」をはじめ、20セルシオ前期や30セルシオ前期をそれぞれ後期仕様にする手法はよく見られたし、20年くらい前に流行ったベンツグリル移植もこのたぐいだ。 エブリイでいうと「エブリイエース」が記憶に新しい。前型のDA64系をベースにした200系ハイエース顔面仕様のことで、2010年代前半にボルトオン装着できるキットが発売された。またそれをベースとして、エブリイエース専用のフロントグリルやバンパーなどがアフター各社から多数リリース。エブリイファンの間で盛り上がりを見せた。そして今でも一定数、売れ続けている。
見た目:同じ軽自動車規格で角型ボディという親和性
さてジムリイである。基本的に顔面スワップ系のクルマは、イロモノというかキワモノというか、ネタ的な面があったりする。何しろ別車種のフェイスをインストールするのだ。万人に受ける王道のカスタムにはなりにくいのだが、ジムリイを見ると「あれっ、これはアリじゃない?」という気にさせられる。
その理由はズバリ、似合っているから。片やラダーフレームの本格クロカン、片や日本を代表する軽バンではあるが、どちらも角張ったボディという共通項があるせいだろうか。真正面からの寄りのカットを比べて見て欲しい。まるでボディタイプの異なる兄弟車のような雰囲気。
ジムニーもエブリイもスズキ車ゆえ、当然ながらエンブレムも同じ「S」がハマる。トヨタ車にレクサスエンブレムを付けたような、ちょっと頑張っちゃった感もない。軽自動車なので全幅も一緒で、左右のヘッドライトの間隔も同じ。顔面移植車はこの「目と目の間の距離」に違和感を覚える例が多いのだ。 筆者が考える顔面スワップの成功パターンは2種類。ひとつは気付かれないレベルで自然なこと。セルシオの後期移植などがこれに当たる。もうひとつはネタとして成立していること。見ればすぐに移植と分かるが、多くの人に「アリ」と認められるパターン。ジムリイに関しては、その両方を絶妙な加減で満たしている気がする。
フェイスチェンジキット:意外にも純正品はフロントグリルだけ
エブリイエースと同様、ジムリイもフェイスキットとして市販化されている。その内容をチェックしてみよう。キットの構成パーツはFRP製の「ボンネット」「フロントフェンダー(左右)」「フロントバンパー」の3点と、取り付けに必要なステーやボンネットストライカー&キャッチなど。これらとは別にジムニー純正フロントグリルと、それに合わせた丸型ヘッドライト&ウインカーが必要になる。 ここでふと気付いた人もいるだろう。顔面スワップといっても、実は純正品は基本的にフロントグリルだけ。にもかかわらず、ここまでジムニーの雰囲気を出せているのだからスゴイ。ボンネットはかなり短くなっているがしっかりとクラムシェル型。フロントフェンダー上部に刻まれた2本のスリットもジムニーのそれを再現。フロントバンパーは縦幅が大きく異なるものの、ナンバー位置も含めうまくバランスを取っている。 グリルはジムニー純正品を無加工で装着可能。つまり、ジムニー向けの社外品も付けられる。ジムニーは社外グリルのラインナップが多く、交換によってガラリと雰囲気を変えられるのが魅力だったりするのだが、その法則をジムリイにも当てはめられる。 ウインカーも純正or社外品を装着可能。ヘッドライトは裏側のスペースの問題で、ジムニー純正品は付けられないため、径を合わせた汎用品を用意しなくてはならない。が、これもある程度選べるくらい出回っているので心配無用。フォグもジムニー純正品は装着不可ながら、社外品は付けられる可能性がある(バンパーに穴開け等の加工が必要)。 なお、このジムリイのフェイスチェンジキットは、「S2レーシング」「Tスタイルオートセールス」にて販売中。DA17Vエブリイ、DA17Wエブリイワゴンの両方に対応し、S2レーシングではDA64系にも装着できるキットも販売している。