まとめ:レストアに「近道」はない
完成したセドリックは現在、日産ヘリテージコレクションの公開エリアにある(本稿執筆時点では一般見学は停止中)。今後は日産が行うイベントなどで展示する可能性もあるという。綺麗に全塗装が施されたボディは新車のようだ。 インテリアは後付けのメーターなどが撤去され、浮きが発生していたトリムが修正されている。当時の日産らしい「絶壁インパネ」は今見るとかなりかっこいい。また、現在の高級車ではまず設定がない5速MTを採用しているのも時代を感じさせる。 シートまわりも再塗装が施され、今製造ラインから出てきたかのような風合い。応接間のようなデザインは当時ならでは。 内装トリムは経年劣化や汚れが堆積していたが、清掃と再塗装でご覧の通り見違えるほど綺麗になっている。ファンなら「このレストア車両を売ってほしい」と感じること必至だろう。 セドリックの現役時代を知らない、ミニバンや軽自動車ばかり乗ってきた今の世代にとって「こんなデザインのクルマを、日本も売っていたんだ!」と感動するのではないのだろうか。
セドリックのレストアを通じてわかったのは「メーカーのレストアだからといって近道なんてない」ということ。クルマが好きだという情熱を持ちながら、地道な作業を積み重ねることでしか「極上の旧車」を作り出すことはできないのだ。
特にこのセドリックにとっては前オーナーまで大切に維持され、レストアを施されたのち(恐らく)生涯ずっと座間で保管されるのだから、クルマにとって「最高の人生」ではないだろうか。オーテックの仕事はクルマ好きにとっても、またクルマにとっても、とても夢に満ちている。