数字だけでなくバランスの良さがカギとなる
一般スポーツ走行枠での試乗だったため、他車とのスピード差があまりにも大きく、素人の筆者ではタイムアタックのような限界走りは不可能だった。1コーナーはコースサイドの看板を目安にブレーキングすることができるものの、その先のコカ・コーラコーナーの進入や100R、ヘアピン先の高速300Rでは最後までかなり「間引いた」走りしかできなかった。今回は310km/hまでしか目視できなかったが、走行後に確認したサーキットアタックカウンターの最高速度は「316km/h」を示していた。試乗時の気温30℃というコンディションと、1コーナーのプレーキングにまだマージンを取った走りであることを考えると、試乗車のポテンシャルがいかに凄まじいかがおわかりいただけると思う。
1000psと聞くと、その数値に意識が奪われがちだ。しかし、実際にサーキットで乗るとエンジンだけが速いという感覚はなく、信じられないほど全体のバランスが取れている。一度、最終コーナーを誤って4速で立ち上がってしまったのだが、それでも楽に300km/hを突破。ピークのみならず、低・中速トルクもしっかりと確保されていることが確認できた。パワーだけが一人歩きするのではなく、冷却系や駆動系、サスペンションなども含めてトータルでバランスが整えられている。加速だけではなく、減速やコーナリングなどすべての要素が高い次元で求められるサーキットで乗ると、短絡的に数字だけを追い求めた仕様ではないということが実感できる。
改めてR35のポテンシャルの高さを実感
試乗を終えて思ったのは、直線で300km/hを超えたという達成感よりも、それほどの速さからでもしっかりと止まれて曲がれることの素晴らしさだ。ブレーキやコーナリングに対する安心感があるからこそ踏める。逆に、ブレーキに不安を抱えたクルマでは恐ろしくて100km/hだって出せない。300km/h出せる条件、それはエンジンパワーやトルクはもちろんのこと、それを受け止めるだけの車体側のキャパシティがあるかどうか。チューンドカーとはいえ、R35GT-Rのポテンシャルの高さには心底驚いた。
なお、その後筆者はドイツ・アウトバーンの速度無制限区間においてノーマルのR35(2017年モデル)で305km/hを経験することができた。その際、助手席に乗っていた日産自動車の田村宏志氏(R35GT-Rの統括責任者)と本当に会話できたことも付記しておこう。