売れない理由3:開発陣の顔が見えなくなった
故・櫻井眞一郎氏をはじめ伊藤修令氏、渡邉衡三氏と直6エンジンを搭載する10代目までは開発陣の顔が見えるクルマであることもスカイラインの特徴だった。現役時代だけでなく、今もなお幾多の自動車雑誌に登場しイベントにも参加。イメージ戦略であったかもしれないが、オーナーやファンと交流を深め、耳を傾けることで、スカイラインブランドを浸透させてきたことは間違いない。
運転が楽しいだけでなく、こうした開発陣の愛を感じさせるクルマだったから、乗り続ける人も多かった。派生車ともいえるGT-Rは今もなお顔の見えるクルマであり続けているが、現在のスカイラインは誰が開発しているか顔がほとんど見えない。開発陣とファンとの距離が遠くなり、求心力が弱くなっているのも原因かもしれない。
売れない理由4:経営陣が変わってスカイラインの立ち位置が変わった
10代目のスカイラインの販売低迷に加えて、日産の経営状態の悪化もあり、次期型の開発も凍結されていた。つまり販売面で見れば、スカイラインの役割は事実上終わっていたのだ。仮に多くのファンが望むような流れで次期型が発売されていたとしても、よほどのクリティカルヒットでもない限り、ブランドの復調は難しかったはずだ。
スカイラインが生き残ったのは、世界のプレミアムブランドと戦うための新たなプラットフォームを開発し、インフィニティブランドの主力としてセダンを投入することが決定していたから。国内では受け皿がないので、当時社長を務めていたカルロス・ゴーン氏がスカイラインというブランドを日産の財産と考え、戦略上そのネームバリューを利用するために残しただけかもしれない。
つまり、11代目は名誉ある歴史/過去の伝統/熱い思いも古い経営体質とともに一度すべて捨て去って、まっさらな開発陣の手でプレミアムセダンとして生まれ変わった。上が変わればすべてが変わる。時代の流れには逆らえない。
オールニューなセダンとして投入された海外では高い評価を受けたが、いいクルマだから売れるわけではないのは世の常だ。国内マーケットでは残念ながら広く受け入れられず、さらに既存のオーナー/ファンには過去と乖離し過ぎたことでスカイラインが生き残った喜びよりも、昔との決別の失望のほうが強く、販売台数低迷につながった。
まとめ:ライバルとは一線を画する新技術の搭載を求む!
SUVになるという噂もあるが、やはりスカイラインは最先端技術を盛り込んだ異彩を放つ高性能セダンであるべきだと思っている。いずれはEVセダンになると予想するが、それはまだもう少し先。
前段階として例えば高出力化に対応したe-POWER仕様(リーフニスモRCやコンセプトカーのIMQに投入されていたEV技術を使えばパフォーマンスアップ、高速化、駆動方式などさまざまな可能性が模索できる)のような今は存在しない新しい技術(価値)を盛り込む。そしてメルセデス・ベンツやBMW、レクサスにはない先進性と圧倒的なパフォーマンスを持つ新世代セダンとしてデビューすれば、ピリッとスパイシーな魅力が出ると思う(デザインイメージはインフィニティQsインスピレーションがベースとか)。
FRプラットフォームは新型Zで残されるし、未来を想定したニュースカイラインが出る可能性はゼロではない。仮にフルモデルチェンジしたとしても4代目のように販売台数がトップ10に入るような爆発的なヒットはありえないし、低迷っぷりを見れば即リストラされてもおかしくない。だが、オーナーやファンではなく、生みの親であるメーカーが「決して諦めない」と公言しているのだから力強い。情に流されては未来はないが、それを打ち破る日産の力と情熱に期待したい。星野朝子執行役副社長の言葉を信じて待とうではないか。