穴が開かなければ一生モノ? レーシングギヤの意外な寿命
サーキットを走るための装備。絶対に必要なヘルメットとグローブに加えて、スーツやシューズまで揃えれば結構な金額だ。これらのレーシングギヤに耐用年数はあるのか、そして買い替えたほうが無難な目安を調べてみた。
ヘルメットの使用期限は10年
まずはカテゴリーを問わないモータースポーツの必需品、ヘルメットの『使用期限』から説明しよう。クルマではバイクと違い転倒で強い衝撃が加わりにくいため、一生モノと考えている人が多いかもしれない。
ただしサーキットで見かける機会も多い『アライ』のヘルメットは、製品安全協会の被害者救済制度である『SGマーク』の有効期限、つまりヘルメットを着用してから3年を買い替えの目安としている。極端な高温や落下で内部の衝撃吸収材がダメージを受けたり、あごひもが外れかけたりしていれば3年が過ぎていなくても要交換。決して安い買い物じゃないので5~7年で買い替える人も多いが、メーカーが推奨するのは『使用開始から3年』と覚えておこう。
スーツ/グローブ/シューズはJAF公認競技で使うなら「FIA」基準を確認
続いてはスーツ/グローブ/シューズについて。まずレースなどJAF公認競技で使うのであれば、必然的に『FIA』の基準をクリアした製品となる。自分の持っているレーシングギヤを見てみよう。レーシングスーツなら襟首のところ、グローブ類も分かりやすい場所に『FIA』のロゴと、8ケタの数字が必ず刺繍されているはずだ。それがFIA公認モデルの証で数字は規格によって異なる。国内は『8856-2000』であれば問題なく使用できるが、古い規格である『1986-STANDARD』はNGなので注意。
買い換える頻度がもっとも高い装備品は?
もっとも買い換える頻度が高いのはグローブ。フィット感と操作性を高めるため生地はどうしても薄くなるし、運転中は常にステアリングやシフトノブを触っているため、どうしても劣化というか擦り切れやすい使用環境ではあるのだ。もうひとつの買い換える目安は表面の滑り止め、シリコンやレザーがすり減ってしまったとき。グローブ本体に使われるノーメックスを始めとした難燃性素材は、触ってみれば分かるとおり非常に滑りやすいのだ。つまりシリコンやレザーがなくなってしまうと、難燃性は変わらずとも操作性が著しく悪化し、別の意味で非常に危険な状況を招いてしまう。シューズも同様で操作性の向上を最優先し、ソールを薄くするので当然ながら減りやすい。
プロドライバーが使うようなハイエンドのシューズであれば、1回のレースでつま先に穴が空くこともあるという。なのでレーシングシューズを普段から使うなんてのは論外、サーキットでクルマに乗り込む直前に履いて、降りたらすぐスニーカーなどに履き替えるのがオススメ。いずれにせよボロボロになったグローブやシューズを使い続けるのは、一見するとモノを大切にしているように感じるかもしれないが、実際は操作ミスを招いたり火災が起きれば身体に大ダメージを負いかねない、非常に危険な行為だということを知っておいてほしい。誰よりも走り込んでウデを磨いた勲章と考え、早め早めの交換を心がけるようにしたい。
アンダーウエアの目的は「火災から身を守る」こと
最後は他に比べて買い替えサイクルが長いアンダーウェア。フェイスマスクにシャツにタイツにソックスといろいろあるが、どれも難燃性の素材で最大の目的は火災からドライバーを守ることだ。つまり交換の目安はグローブやシューズと同じ。なおフェイスマスクはヘルメットに汗が染み込むのを防ぎ、イヤな臭いがこびり付きにくいメリットもある。