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不可能を可能にした「夢の技術」! ホンダの低公害エンジン「CVCC」は何がスゴかった?

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TEXT: 近藤暁史(KONDO Akifumi)  PHOTO: ホンダ/写真AC/Auto Messe Web編集部

触媒なしというのも注目のポイントだった

 まずこの汎用エンジンを使用して試験を実施して、その後、N600のエンジンを改造した試作エンジンを完成させている。ただ、ここから先となると、そもそもエンジンがないことが問題になり、結局、日産の1.6Lエンジンなどを使用して開発を行った。また、車両に積んでの試験の際も、軽自動車に積むわけにはいかず、日産のサニーに積んでテストをしている。

 仕組みはシンブルで、一般的なシリンダーの手前に別に小さな燃焼室を作って、ここは濃い混合気を入れてまず点火。燃料が濃いので着火しやすく、それが火種となって薄い混合気が入っている本来のシリンダー内に噴射されるように伝わることで、確実に爆発することができる。また噴射の勢いで、シリンダー内に渦流ができて、燃焼効率を上げることにも寄与した。CVCCエンジンの仕組み

 これらの作用で最初に紹介した一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)を減らすことが可能になる。理想空燃比1:14.7に対して、全域で1:20ぐらいで運行しないとマスキー法はクリアできないとしていたが、それを実現しているし、当時主流だったキャブレターを精度は高めたもののそのまま使っていたり、触媒なしというのも注目のポイントだ。つまり、ヘッド部分を交換するだけで、従来のエンジンにも使えるというシンブルさも利点だった。もちろん燃費もいい。CVCCエンジン

CVCCの意味とは?

 CVCCの技術が発表されたのは1972年10月11日のことで、マスキー法が可決されてから2年後のこと。CVCCの名称についてはまだ特許が完全には認められなかったことなどから、名称からその内容がわからないようにするため、意味としては複合渦流調速燃焼とした。単純にわかりやすくて、パンチがあるというのも意図としてあった。CVCCの意味としては下記のようになっている。CVCCエンジンの仕組み

・Cは、燃焼室がふたつがあることから、「複合・複式」を表すCompoundの頭文字。
・Vは、副燃焼室で作られた火炎が主燃焼室に噴流となって噴出すると、渦流が起きて、燃焼速度を早める作用をすることから「渦流」を表すVortexの頭文字。
・CCは、燃焼速度を適正コントロールすることから「調速燃焼」を表すControlled Combustionのそれぞれの頭文字。CVCCのエンブレム

 当然、国内外から驚愕されることなるが、対策に苦慮していた他メーカーからも声がかかるようになる。排ガス規制パスは深刻な問題だっただけにライバルからも声がかかり、まずはトヨタでいすゞやフォード、クライスラーにも供与された。ホンダとしては天下のトヨタから声がかかったことでハクが付いた。供与を受けたCVCCをトヨタはトヨタトータルクリーンシステム、TTCとしてコロナやカリーナに採用している。

 ホンダとしての搭載第1号は1972年に登場したお馴染みの初代シビックで、1年後の1500ccの4ドアとなる。肝心のアメリカでは認証試験での苦労はあったものの、1975年から販売されて、北米でももちろん大ヒットとなった。ホンダはバイクと環境自動車というふたつの柱ができ、シビックは北米での販売を拡大していく端緒となった。CVCCエンジンはシビックに採用された

 CVCCの環境性能はもちろんこと、触媒なしと燃費はその後のアメリカで有利となるもので、当時はまだ触媒の機能を低下させる有鉛ガソリンも多く販売されていたし、オイルショックもあって燃費への意識も高まっていたのも後押しした。シビックに搭載されたCVCCエンジン

 その後、CVCCはCVCC-IIに進化して、1980年代まで、多くのホンダ車に搭載されることになり、環境性能のホンダというイメージを強く印象付けることとになった。

 一方、ホンダとともにクリアできるとした東洋工業もロータリーを改良することでパスしたが、いかんせん燃費が悪く、同時期にはオイルショックが襲ったことから、逆風にさらされた。ホンダと東洋工業は実に対照的な結果となった。

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