夢にまで見る憧れがカタログには詰まっていた
そして、ドラマが始まった。初代セリカXXのカタログを開くと、そんなコピーがまず目に飛び込んでくる。確かTVCMでも同じコピー(語尾には“始まる”もあった)が使われ、いかにもアメリカン・ドリームを象徴するかのような丘の上の自宅に帰ってくる白いXXが映し出され、妻と2頭の犬がそれを出迎える……そんなシーンに「愛情物語」(1956年のアメリカ映画)のゴージャスなオーケストラアレンジのテーマ曲(原曲はショパンの「ノクターンOp.9-2」)が流れる……そんな構成だった。
セリカXXは北米では初代スープラ
初代セリカXXは、当時北米で大人気だったダットサン・フェアレディZを睨んで市場投入されたクルマだった。車名のXXも実は“Z”を意識したネーミングだったが、北米では特定の意味を持つことから使われず、当初からスープラの車名が与えられた。3代目から日本市場でも共通のスープラを名乗るようになったのはご存知のとおりだ。
日本での発売は1978年(昭和53年)8月のこと。時代の空気感でいうと、マツダ・コスモAP(1975年、Lは1976年)、三菱ギャランΛ(1976年)などがすでに発売されており、華々しくリッチな高級スペシャルティカーが注目を集めていたころでもあった。そこへセリカXXが登場したことで、まだソアラ前夜(初代ソアラの登場は2代目セリカXXの登場と同じ1981年のことだった)ではあったが、パーソナル感覚の贅沢でゴージャスなクルマの1ジャンルをこれらのモデルが形作ったのだった。
セリカXXは車名のとおり、もともとはセリカの上級モデルとして設定された。簡単に言うとセリカに対しセリカXXはホイールベースが130mm伸ばされ、延長分は主にフロントノーズ部分(ドアから前)に充てられ、セリカが4気筒エンジン搭載車だったのに対して、エンジンコンパートメントに6気筒が載るようにしたものだった。
スタイリングは2代目に進化したセリカLB(リフトバック)をベースに、まさにロングノーズ化したもの。当時のことを個人的に思い返すと、ご多分に洩れず初代セリカは、最初の愛車候補に最後まで残っていたくらいのお気に入りだった。しかし、“答えは風の中にあった”のコピーで1977年に登場した2代目は、斬新な空力スタイルだったことは認めつつも、初代のあの颯爽としたスタイルからの変わりように今ひとつ馴染めずにいた。ノイズがグイッと伸ばされたXXは、なるほどこういうバランスならアリかも……と思わせられていたような気がする。
あのトヨタ2000GT由来の“T”をモチーフにしたフロントグリル、角型4灯ヘッドランプ、太い艶やかなBピラー(経年変化で内側に気泡が生じやすいようだった)、広いグラスエリア、横長のテールランプなど、フォルムもディテールも新しいXXの威風堂々としたスタイリングは、4気筒のセリカとはひと味もふた味も違う存在感があった。ただし当時のクルマだから全幅は1650mmでしかなく、今の感覚ではへぇ、そんなにコンパクトだったんだ……とも思う。