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「ホチキスの針刺し」「セメダイン」「バネ強化」! ちびっ子が夢中になった「スーパーカー消しゴム」ブームの秘密

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TEXT: 高桑秀典(TAKAKUWA Hidenori)  PHOTO: 高桑秀典/Auto Messe Web編集部 米澤 徹

遊び方はノック式ボールペンで消しゴムを弾くだけ

 これが存在したからこそ、カー消しを使った遊びが成立したのだといえるボールペンが三菱鉛筆の「BOXY」だ。当時1本100円で販売されていた。「BOXY」が子供たちの間で定番となったのは、その形状が独特で、卓上に置いた際に物凄く安定感があったからだといえる。スーパーカー消しゴムの遊び方

 カー消しを弾き飛ばす力を強めるために、内部のバネを取り出し、グゥ~っと伸ばしてから戻すチューニングが盛んに行なわれた。しかし、バネが細く、伸ばし過ぎてしまった場合にバネとしての機能が失われることがあった。BOXYのボールペンのバネ

 そこでバネを2本入れるチューニングも実践されたが、実戦経験が豊富、すなわち磨り減っている「BOXY」で“2本入れ”を行なうと、バネの力を解放するオレンジ色のボタン部が壊れてしまうことがあった。BOXYのボールペンのポッチ

 売価が50円で、しかも「BOXY」よりもバネが太い=カー消しを弾き飛ばす力が強いボールペンも存在したが、亜種もしくは異端扱いされたこともあり、認知度、販売実績ともに「BOXY」の牙城に迫るまでには至らなかった。現在、50円ボールペンのメーカー名、商品名などは不明とされている。

「BOXY」を使ったカー消し遊びには、大きく分けて2種類があった。相手を土俵に見立てた机の上から押し出したら勝ちになる「カー消し相撲」と、決められたコースを走らせ、相手より先にゴールしたら勝ちになる「カー消しレース」だ。「BOXY」のワンプッシュで誰が一番遠くまでカー消しを飛ばせるか、というシンプルな遊びもあった。スーパーカー消しゴムの遊び方

勝つためにはどんな手があったの?

 机との摩擦係数を減らすために、カー消しの底にホッチキスの針を打つことで飛距離を格段にアップさせることができた(画鋲やシャープペンシルの芯を刺すこともあった)。このカスタマイズは、レース時に威力を発揮した。

 そして、本来は美術の時間に使うべき彫刻刀を悪用し、カー消しの中身をくり抜いてしまうというカスタマイズもあった。カー消しを思い切り軽量化できたので、こちらもレース時に有利なマシンを構築できた。スーパーカー消しゴムをカスタムしている様子

 また、カー消しの裏面で少しだけ出っ張っているタイヤ部分にセメダインなどの接着剤を塗り、乾燥させて、滑りやすくする方法もあった。このイジり方がレース用カー消しを製作する際の正しいカスタマイズとして定着したといっていい。レース用にカスタムされたカー消し

 手元にあったプラモデル用塗料の「うすめ液」にカー消しを一晩ぐらい浸けておくと、車体が硬化し、ひとまわり小さくなるという究極のカスタマイズもあり、この反則技によって完成したカー消しは長距離レースで圧倒的な強さをみせた。うすめえきで硬化させる方法もあった

 カー消し相撲用のカスタマイズとしては、裏面のタイヤ部に練り消しを付けるという方法があった。滑りにくい練り消しにより摩擦係数が増大し、まさに横綱級の安定感を披露した。

 あの頃、おこづかいをやりくりして買ったスーパーカーグッズ。当時の男の子なら誰もが夢中になったスーパーカー消しゴムは、シンプルだが実に奥深い世界だった。

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  • 高桑秀典(TAKAKUWA Hidenori)
  • 高桑秀典(TAKAKUWA Hidenori)
  • 本業はフリーランスのライター兼エディター。1998年に買ったアルファ ロメオGT1600ジュニア(通称:水色号)を現在も愛用しており、すでに総走行距離が30万8000kmオーバーとなっている(2022年4月中旬現在)。クラシックカーラリーに水色号で参戦取材することがライフワーク(?)となっており、群馬をホームタウンとして開催されている「スプレンドーレ」では、柴犬を“ワン・コドライバー”、秋田犬を総監督として挑んでいる。全国各地に水色号でお邪魔しているので、これからも走行距離が順調に伸びる予定。
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