ファミリーカーの弱点を補いベース車の新規開発にも好影響
このほかミニバンの場合、ノーマルグレードは高重心かつ重いボディによって走行安定性が物足りない。スポーティに走るつもりは一切なくても、家族を乗せるから危険を避ける性能は十分に確保したいもの。その意味でもノア&ヴォクシーのGRスポーツは、ボディの底面を中心に補強を行い、サスペンションが正確に作動するように配慮されている。ノーマルグレードに比べて走行安定性が高い。
GRスポーツの基本はドレスアップだが、ボディ形状や車両重量、コストの低減などによって生じたミニバンの欠点を補う効果もあるわけだ。売れているか否かと問われれば後者だが、細かなユーザーニーズに応えられるメリットはある。
クルマの開発者からは「(GRのような)コンプリートモデルの運転感覚に刺激され、ノーマルグレードの設定を見直したこともある」といった話も聞かれる。良い刺激を与えている面もあるわけだ。
ただしメーカーが自ら、古い誤った認識を持っていたのではダメだ。以前、ヴォクシーとノアのCMに、前輪駆動車なのに後輪を横滑りさせながらドリフト状態で走る映像があった(後輪は止まっていた)。あれでは一般のドライバーからは「何だか怖いクルマ」と思われ、クルマ好きは「アホかっ」と呆れるから、誰からも共感を得られない。