ワイドトレッド&フェンダーにして大パワーを受け止める
FFホットハッチという言葉はお馴染みで、ステリングを切ってアクセル踏むと暴れるトルクステアや、アクセルを戻すと前に荷重が大きく移動して、テールが強烈に巻き込むように出るタックインなどのイメージがある。FRとはまた違った、過激な走りゆえにホットハッチと呼ばれるわけで、トヨタのスターレットやホンダのCR-Xなどが代表格だ。
乗用ハッチ+ミッドシップという異形のスポーツカー
往年のWRC、グループ4やBのホモロゲを取得するために市販されたルノー5ターボやプジョー205ターボ16がそれで、ハッチバックのボディをベースにして後席部分にエンジンをミッドシップとし、さらにワイドトレッド化。
FFのハッチバックボディをベースにV6エンジンを搭載
どちらも過激だったグループBの申し子的なクルマで、記憶の彼方というか、懐かしのクルマになっていたと思っていた2000年に登場したのが、クリオ・ルノースポールV6だ。
5(サンク)の後継車がクリオ(日本名はルーテシア)なので、まさにルノー5ターボの再来。FFのハッチバックボディをベースにして、V6を後席部分に置いてミッドシップ化しつつ、ワイドトレッド&フェンダーにして大パワーを受け止めるという手法はそのままだった。
1998年のパリサロンに出たプロトタイプそのままに発売されたもので、エンジンは当時のラグナなどに搭載されていた3L V6をチューニングし230psを発生。トランスミッションは6速MTだった。車重は1.3トン程度で、タイヤサイズはフロントが205/50R17、リヤが235/45R17と、当時としてはかなりワイド&低偏平サイズを採用していた。
乗ると普通だが熱がこもりやすかった
文字にすると過激というかパラバラな感じもするが、新車当時に何回か乗った経験からすると意外に乗り心地は普通で、さすがに踏めば過激に加速するものの、超ワイドのおかげもあってコーナーなどでは高いレベルで安定していて、不安はまったくなかった。ちなみに公表数値としては0-400mが14.5秒、0-100km/hは6.4秒。最高速度については235km/hとされていた。
性能は別として、困ったのがエンジンからの熱で、リヤシートにエンジンが置いてあるのと同じなわけで、板で囲ってあるものの文字通りのただの板。走れば走るほどに熱がどんどんと車内に充満したし、エンジン音だけでなく、つねにうなり続ける冷却ファンの音もかなりのもので、スペシャルなクルマであることを身を以て体験できた。
フェイズ2はアルピーヌの工場で生産されていた
生産はかのレーシングコンストラクター、TWR(トムウォーキンショーレヘーシング)。手作業で組み立てられ、1600台ほどが生産された。2003年に進化版のフェィズ2へとバトンタッチ。2005年にこのフェイズ2も1300台ほどで生産終了となった。ちなみにフェイズ2はアルピーヌの工場で生産されていた。
手作業ボディにも思い出があって、試乗している最中になにかの拍子にワイド化されたリヤフェンダーの奥に手を入れたところ、中にもう一枚フェンダーが……。よく見るとノーマルのボディはほぼそのままで、上にワイドなフェンダーが両面テープで貼ってあるだけ(リベットは使っていただろうが)というシンプルさに驚いた覚えがある。