現行フィットの潜在能力を引き出す!
実効空力デバイスなどの採用で、確たる走りの領域を確立しつつあるホンダのモデューロX。今回は、新型フィットe:HEVにモデューロXが設定され、一般道および群馬サイクルスポーツセンターの特設コースで試すことができたのでリポートしよう。
一般道でも違いがわかる絶妙セッティング
フィットモデューロXの先行試作車に、以前袖ヶ浦フォレストレースウェイで試乗したことがある。そのとき、意のままに操れる高いライントレース性や、空力的に優れた前後バンパーのデザインなどに触れることができた。今回それを完成域に高め、見るからにも上質な仕上がりと所有感を生み出し、走行性能にも寄与するデザインとして完成させている。
まず都内の一般道を走行し、高速道路から群馬サイクルスポーツセンターへと向かうルートを走ってみる。モデューロXに採用されているチューニングアイテムは、フロントバンパー、リヤバンパー、ルーフスポイラーなどの実効空力デバイスと、サスペンションの前後ショックアブソーバー、そして専用設計された16インチアルミホイールである。
それ以外にもリヤのライセンスガーニッシュや専用のフロントグリル、ダーククロームメッキエンブレムなど外装を彩るアイテムが追加された。また、インテリアにもブラックとボルドーレッドの2トーンカラーやオールブラックのレザーシートなど、専用の装備が採用されモデューロXとして形づけられている。
一般道を走行してみると、まず始めに路面の継ぎ目や段差などで若干ハーシュ(突き上げ)がきつくなっていることが体感できた。スプリングレートはノーマルのまま。タイヤもオリジナルであることを考えると、そのハーシュの発生はショックアブソーバーのチューニングによるところと、ホイールの高剛性化によるところがおもな原因と考えられる。
しかしハーシュといっても不快感があるのではなく、足まわりが固められているなというイメージに繋がるもの。またその結果、バネ上の車体の揺れを抑えることに成功し、ドライバーの着座位置での頭まわりの揺れや体の振れなどを抑えることに繋がっているという。
ノーマルのフィットではハーシュこそ小さめだが、路面の段差や継ぎ目などでホイールの上下運動が発生すると、その動きがバネ上をワンテンポ遅れてから揺らし始める。そのためドライバーは路面とのダイレクトな感覚を掴みにくく、一体感が乏しいと感じてしまう。モデューロXでは若干ハーシュを感じるものの、クルマとの一体感を得ることに成功。「さあこれから走り込むぞ」という気持ちを高めることに繋がっているのである。
高速道路では空力性能の高さをさらに実感!
高速道路に進入し車速を上げていくと、60km/hを超えたあたりから非常にフラットな乗り心地、車体姿勢であることが感じ取れるようになってくる。これはまさに実効空力デバイスの効果で、モデューロXは風から逃れるのではなく、風を味方につけるという設計コンセプトが大いに発揮されていることの証といえる。
クルマは走行すると空気抵抗により、車体が持ち上げられるリフト方向に力が加わる。それが前後で異なると、車速や走行姿勢によってタイヤと路面の接地感が前後で異なり、ドライバーには常に不安定な路面インフォメーションが伝わってくるようになる。
モデューロXはフロントバンパー下の造形や前後のバンパーエッジ、ルーフスポイラーなどで前後リフトを理想的な形にすることに成功し、フラットな姿勢を高速域でも維持できることに成功しているのだ。
それは100km/hになるとより明確になる。車体がずっとフラットで車高が一定に維持されるので、路面の段差やアンジュレーションなどでホイールが上下動するのに対して低速でのハーシュのような突き上げ感がなくなる。スカイフック理論に基づくような、まるで空の一点にクルマが吊り下げられているような感覚で、ホイールだけが上下に動く不思議な安定感に浸ることができるのである。四輪の接地感がつねに安定しているので安心感が高まり、ウエット路面でも高速走行していて不安を感じることはなかった。
こうした効果は今回風洞などの施設を使って可視化されているが、実際のモデリングはModulo開発アドバイザーである土屋圭市氏が走り込み、デザイナーが細かく修正を加えることで仕上げて完成させられているという。とくにフロントバンパーの下側に位置するエアロスロープやエアロボトムフィンなどが効果的であり、実効空力デバイスもいよいよ本領が発揮される完成域に達したと実感することができるのだ。