ワークスが採算度外視で作った超本気セダン
クルマを購入する際、特に大きなハードルとなるのが「家族」だろう。デザインや乗り心地もさることながら、「家族全員が乗れない」「買い物の荷物が積めない」となれば、真っ先に選択肢から外される。だからこそ、自動車メーカー直系のワークスブランドが採算度外視で作り上げた超本気のコンプリートセダンは、ハードコアなクルマ好きほど“刺さる”。その中でも特に高い次元で走りと実用性を両立させた3台を、改めて振り返りたい。
【日産スカイライン・オーテックバージョン】(1992)
第2世代スカイラインGT-Rの心臓部であるRB26DETT型2.6L直列6気筒DOHCターボエンジンは、グループAに必要な600psまで想定し設計されたことで広く知られている。それを敢えてNA化した「RB26DE」を搭載するのが、R32型スカイラインセダンをベースとして作られた「オーテックバージョン」だ。
エンジンはRB26DETTの6連スロットルを活かしつつ専用の吸排気系とカムシャフト、ピストン、コンピュータに変更して220ps&25.0kg-mを確保。これに4速ATと電子制御4WD「アテーサE-TS」とを組み合わせている。
また、サスペンションは専用チューンで、タイヤは205/55R16 88Vのブリヂストン・エクスペディアS-01。さらにGT-Rと同じフロント対向4ピストン・リヤ2ピストンキャリパー&ドリルドローターブレーキが与えられた。
一方で内外装は、冷却性能を重視した専用フロントグリルやアルミ製ボンネット、エクセーヌ×ダブルラッセル生地を用いたハイサポートシートなどが用いられているものの、分かりやすく「オーテックバージョン」を主張する演出は少ない。 だが、だからこそ、GT-Rともベース車の最もスポーティなグレード「GTS-tタイプM」とも異なる官能性と快適性を兼ね備えた、上質なGTサルーンに仕上げられている。
【日産スカイラインGT-Rオーテックバージョン40thアニバーサリー】(1998)
R33型スカイラインGT-Rの走りのメカニズムを数多く移植し、ベース車の2ドアクーペと同等の走りを4ドアセダンで実現した「オーテックバージョン40thアニバーサリー」。
そのエクステリアは、GT-Rと同じ開口部の大きい迫力あるフロントマスクながら、後席の居住性に配慮したことが如実にうかがえるサイドビューと、スポイラーを装着しない控えめなリヤビューが組み合わされ、実にマニア心をくすぐる“羊の皮を被った狼”に仕立てられている。
インテリアも基本的には2ドアのGT-Rに準じており、前席にはGT-R専用のセミバケットシートが装着されているが、後席もホールド性を重視した「オーテックバージョン40thアニバーサリー」専用の2シーター仕様。中央がサイドサポートをアームレストを兼ねて大きく盛り上げられた形状で、ワインディングでも後席の住人が快適に過ごせるよう設計されているのもこのモデルらしいと言えよう。