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なぜイギリスにスティーブ・マックイーンの「ポルシェ917K」が!? 見どころたっぷりの「英国自動車博物館」

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田了

クルマ趣味王国イギリスは博物館の本場

 これまで、フェラーリに関する博物館と、ポルシェに関する博物館を紹介してきましたが、今回は特定の自動車メーカーに関わらず、幅広くクルマ趣味を嗜んでいる人向けにお奨めのイギリスの博物館を3つ紹介していきます。1875年グレンヴィル蒸気自動車

    個々の博物館を紹介する前に、イギリスのクルマ事情について触れておきましょう。19世紀後半に施行された悪名高きLocomotive Act(機関車法)によって自動車産業の発展と、モータリゼーションの発達に大いに支障をきたしたイギリスですが、1886年にこの悪法を廃止して20世紀を迎えるころには、いくつかの有力な自動車メーカーが誕生しています。そして自動車大国への道を辿り始めたのですが、第二次大戦後は“英国病”が蔓延し、また日本車の攻勢などもあり、英国メーカーは次第に凋落していきました。

  残念ながら現在は、趣味性が高い商品を少ない台数だけ生産する、小規模なメーカーが残るのみ。多くのブランドが廃止され、また生き残ったブランドも、海外資本の傘下に入り、往時の勢いは見る影もありません。その一方で、趣味性という観点から(旧い)英国車の人気は高く、今もってイギリスはクルマ趣味の王国なのです。ジャガーXJR-9 グループCマシン

ビューリー国立自動車博物館

 そんなイギリスの特徴的な自動車博物館と言えば、先ずはヒースロー空港から南西に約80マイル(130㎞弱)離れたハンプシャー州ビューリーにあるビューリー国立自動車博物館。ビューリー国立自動車博物館 国立とは言うものの、そもそもは男爵の爵位を持ったモンタギュー卿が1959年に設立したプライベートコレクションでした。設立から13年後には現在のメインホールが完成するとともに、運営を端とするNational Motor Museum Trust Ltdが設立され、国に慈善団体として登録されたことにより“国立”を名乗るようになりました。これによって一般オーナーからの寄贈などが進み、収蔵展示車が充実していったのです。公園内で自動車博物館を結ぶ跨座式モノレール これは自動車博物館としての収蔵車両とは関係ないのですが、公園内には自動車博物館とパレスハウスを結ぶ全長1.6㎞の跨座式モノレールが設けられていて、博物館駅の直前では軌道が博物館のメイン展示場の屋内上部を通過するようなレイアウトで、モノレールの車内から展示ホールを見下ろすことができるようになっています。ちなみに、このモノレールは英国初のモノレールで、メインホールが完成した2年後にここに移設されたものです。1930ベントレー4.5-litreスーパーチャージャー ビューリー国立自動車博物館の収蔵展示車両は、19世紀末期の蒸気エンジンを搭載した荷車や、20世紀初頭のディムラーやロールス・ロイスなどの古典の名車から、20世紀末のレーシングカーまで数多いのですが、個人的にはGulfカラーのポルシェ917Kが最も“刺さった”1台です。ポルシェ917K これはスティーブ・マックイーン主演の『栄光のル・マン』の撮影中(つまり1970年のル・マン24時間レース本番中)にクラッシュした個体で、それをポルシェでリビルドし、翌1971年のデイトナ24時間レースで優勝したクルマそのものということ。そんな経緯は別にしても、Gulfカラーのポルシェ917Kというだけで感動はMaxまで盛り上がります。ビューリー国立自動車博物館で見た空中回廊での展示方法 もうひとつ印象に残ったのはマクラーレン&フェラーリ、ジャガーのCカーが吹き抜け部分に設置された“空中回廊”に整列する展示方法。グッドウッドのフェスティバルofスピードのメイン展示でもよく見かけますが「イギリス人ってこんな派手な趣向があるんだ!」と驚かされました。市販モデルだけでなくラリーカーも何台か展示されているので、レースファンだけでなくラリーファンにもお奨めです。

ブルックランズ博物館

 続いて紹介するのはブルックランズ博物館。ヒースロー空港からは15マイル(約25㎞)足らずで、クルマだと30分弱で到着する便利なアクセスも魅力のひとつですが、こちらは舗装された常設のサーキットとしては世界最古とされるブルックランズ・サーキットの“跡地”に開設された博物館です。ブルックランズ・サーキットの“跡地”

 その名の由来となった小川(Brook)に架かる小さな橋を渡って入場した先には、自動車博物館だけでなく、超音速旅客機として知られるコンコルドも展示されている航空機博物館や、新旧の2階建てバスをメインに展示されたロンドン・バス博物館も、エリア内に併設されています。ブルックランズ博物館入口の小川 自動車博物館に関しては3つのホールが用意されていて、それぞれが旧き良き時代の風情を漂わせています。ホールナンバー8番のジャクソン小屋 ここでのお薦めはホールナンバー8番のジャクソン小屋(JACKSON SHED)で、まだ第一次世界大戦前の1912年式ロレーヌ・デートリッヒから第二次大戦前のアストン・マーチン、そして戦後のクーパーや現代のマクラーレンまで、新旧さまざまなグランプリカーが展示されています。1912年式ロレーヌ・デートリッヒ それもクルマのみならず歴史的に注目すべきエンジン……例えばジャガーXJR-14に搭載されていたフォード・コスワースの3.5L V8のHBCなど有名なものだけでなく、アンザーニの1926年式の1.5Lツインカム・エンジンといったマニアックなものまで……多くのユニットが展示されています。フォード・コスワースの3.5ℓV8

 個人的には、この時が初対面となった1979年のウルフWR7・フォードがとても印象に残っています。ウルフWR7・フォード

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