自動車メーカーの生産ラインを使って高性能モデルを量産
A35はハイパフォーマンスモデルのA45と同じくAMGが開発に関与するが、エンジンまで含めてメルセデスの工場で製造される点が異なる。これは、A35(C43、E53も含む)が2015年に、AMGとAMGスポーツパッケージの間を埋めるために登場したAMGスポーツを源流としているため。現在、同じAMGのなかにハイパフォーマンスモデルとエントリースポーツモデルが混在しているのだ。
A35とA45で比較すると排気量が2Lターボ、駆動方式も4WDと同じだがエンジン型式は異なり、パフォーマンス(A35が306ps、A45が421ps)にも大きな差がある。A35はAMGのイメージを損なわず、その敷居を下げたモデルと言える。
Mのあとに3桁の数字が並ぶMパフォーマンスモデルのM240iは、同カテゴリーのMシリーズ(M2)とは製造方法や車体だけでなく搭載されるエンジンも含めて共通性があるので、ベースモデルといってもあながち間違いではない。
ただ、Mシリーズのようなコンプリートカー仕上げではなく、ノーマルの潜在能力を引き上げるトータルバランスを重視してM社がチューニングを施したモデルである。極限域で速く駆け抜けるために必要な電子デバイスなどのハイテクや、軽量パーツなどは省かれていることがクルマの性格を表している。M2コンペティションとは70psの差はあるが、3Lツインターボで340psは必要にして十分。程よいパフォーマンスが魅力だ(M2の新型が発表されていないため旧型にて比較)。
アウディSシリーズはRSと異なり、量産メーカーの生産ラインを使って製造されるスポーツモデルなのは、ほかの2社と同じ。開発にワークス集団であるアウディスポーツは関与しておらず、あくまでもアウディのスポーツモデルという位置付けだ。エンジンも同クラスのRSシリーズと共通性はなく、S3とRS3で比較した場合、前者は2L直4ターボ(310ps)で、後者は2.5L直5ターボ(400ps)。性能だけでなく、スペックでも明確に差別化しているのが特徴である。パフォーマンスと実用性を両立させ、ゆとりのある高性能オールラウンダーな資質を持たせているのがSシリーズの真骨頂だ。
継続生産し国内外に名前を浸透させることが大事
ちなみにブランドのボトムレンジとなるAMGスポーツパッケージ(現在はAMGラインに名称が変更)、Mスポーツ、Sラインパッケージは標準モデルのパッケージオプションだ。グッとスポーティに仕立てたエアロパーツやサス、ブレーキなどを投入した、ルックスと走りを磨き上げたモデル。GRではGRスポーツ、STIではSTIスポーツのような存在で、プレミアムブランドのテイストを味わいたいオーナー向けの入門モデルとなっている。
日本のワークスの展開は今回取り上げたドイツプレミアム御三家のサブブランドをなぞり、目標としていることがラインアップやカスタマイズのプランを見てもよくわかる。20年前はサブブランドが単独で製造していため大量生産が難しかったが、現在は自動車メーカーとの協業に。そのため価格を抑えながら高性能なコンプリートカーを量産できる体制が整っている。国内のみならず、海外でもブランドが浸透してきたことは大きな意味を持つだろう。プレミアム性で御三家に並ぶのは難しいかもしれないが、まずは収益を上げて継続することが大切。そこから活路が見えてくるはずだ。