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「個性がない」のが逆にウリ! コスパが高くて機能もバッチリ「白物家電クルマ」の魅力

白物家電クルマと揶揄するのは過去の話

 家事や日常の生活に用いられる一般的な電気製品を示す言葉の「白物家電」。その最大の特徴といえるのは、趣味の対象になりえないことではないだろうか。

 たとえば家電でも、オーディオやテレビをはじめとするAV機器は趣味として楽しむ人もいる。しかし、冷蔵庫や洗濯機、エアコン、そして炊飯器など一般的に白物家電と呼ばれるアイテムを趣味としている人はなかなかいないだろう。趣味としているのであれば、かなりマニアな世界だ。

 白物家電は不特定多数の人を対象にしていると同時に、とにかく使いやすさが求められる。最新の高機能であれば優れた商品かと言えばそうとは言い切れず、先進機能よりも、誰でも簡単に、便利に使えることのほうが重要だ。「性能がいいけど使うのが難しい」というのは許されない。

 そして普及帯の商品に関しては、価格と機能のバランス……つまりコストパフォーマンスが優れていることも欠かせない部分。必ずしも値段の安さだけが求められるわけではないが、高機能で高いものは主流とはならないだろう。生活密着のツールだからだ。

白物家電の代名詞「トヨタ•カローラ」

 何を隠そう、そんな白物家電の考え方(あくまで考え方)は、クルマ界にもある。個性はなく驚くほどの高性能でもないけれど、機能的で使いやすくて便利。そして価格もほどほど。そんなクルマだ。

 過去を振り返ってみると、そんな“クルマ版白物家電”の代表格はトヨタ•カローラではないだろうか。

 1966年に初代が発売されたカローラは、廉価ではない“デラックス感”を掲げて登場したものの、クルマ自体は小型大衆車。トータルで高い完成度を実現する「80点主義」の思想で開発され、廉価なベーシックカーの「パブリカ」とは異なる「ちょっとリッチな感じ」を備えつつ、根底にあるのは生活を楽にする実用車。大多数の消費者に向けた商品企画であった。 上級すぎず、使いやすくて価格も控えめ。そんな商品企画は消費者のニーズとしっかり合致し、1969年から2001年度までの33年間も日本国内の販売台数ナンバー1の座に君臨し続けた。これぞ、日本のマイカー普及を後押しする存在となった、歴史に残る白物家電カーだ。

令和時代の白物家電軽カー「ホンダN-BOX」

 そして今、“白物家電カー”の代表といえばなんといってもホンダN-BOXだ。趣味性はまったくないが、軽自動車とは思えない広い室内があり、乗り降りもしやすく、便利に使うことができる。プレーンで、強い個性や自己主張がない代わりに誰でも受け入れやすい自然な雰囲気のデザインも白物家電っぽいところ。老若男女問わず乗る人を選ばないのだ。

 そんなN-BOXもまた、市場では大人気である。初代デビューは2011年と歴史は浅いが、その翌年度(2012年度)には早くも軽自動車販売台数ナンバー1を獲得。それ以来年間25万台前後を販売し、2014年を除いて8年間も販売トップに輝いている。 近年は登録車(小型車/普通車)を含めても、実質的に日本でもっとも売れているクルマになっている(2020年はトヨタ•ヤリスが販売台数ナンバー1となったが、それはヤリスとヤリスクロスを合算でカウントしたもの)。単体でカウントすればN-BOXのほうが販売台数は断然多い。とにかく売れまくっているのだ。

白物家電トールワゴン「スズキ・ソリオ/トヨタ•ルーミー/ダイハツ•トール」

 また、スズキ・ソリオやトヨタ・ルーミー&ダイハツ・トールも白物家電カーといっていいだろう。

ソリオ

ルーミー

トール

 いずれも軽自動車プラスαのコンパクトボディながら背の高いパッケージングとすることで室内は広く、前後席間距離を長く確保することで後席の広さは圧倒的だ。 多くのクルマ好きが興味を示さない一方で、その実用性の高さから市場での人気は高く販売も好調。N-BOX同様に、生活を便利にしてくれるクルマといっていいだろう。

 昭和から平成前半を駆け抜けたカローラ。そして平成後半を代表する国産車となったN-BOX。そしてソリオやルーミーとトール。それらに共通するのは、ユーザーを選ばない懐の広さだ。誰にとっても使いやすく、価格もほどほどなのだ。それこそが白物家電カーの神髄といえるだろう。

 興味深いのは、かつてのカローラと、今どきのNボックスなどを比べると、現在の白物家電カーは圧倒的に背が高くなっていることだ。つまり白物家電カーは“変化しないもの”ではなく、“時代に合わせて変化する存在”なのである。 背が高くなったことでもたらされたものは室内の広さ。カローラに比べると、軽自動車のN-BOXですら室内は圧倒的に広い。

 一方で時代が移っても変わらないのはやはり、高い実用性、手ごろな価格、そして良好な燃費だろう。趣味の対象ではないからこそ、そういった基本的な価値は不変なのだ。

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