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「あの美しさに見惚れて……」女子ジャーナリストが「オフロードバイク」にハマった意外な理由とは

「バイクを操る感覚が好き」オフロードバイクが教えてくれた世界

 私はバイクが好きだ。バイクに乗ることを仕事にしてしまうほどに、夢中になっている。

 現在は仕事が忙しく乗る機会が激減しているので「夢中になっていた」と言ったほうが正しいかもしれないが、ファッションデザイナーを目指して上京し「好きなことは仕事にしてはいけない」という、よく耳にするありふれたフレーズ通りにファッション業界に絶望。夢を見失っていた私を再び夢中にさせてくれたのが、バイクとの出会いだったのだ。 とは言っても私が好きなのは、バイクの車種でも、スペックでも、搭載された技術でもなんでもない。極端な話をすると、乗るバイクなんて何でもいいし、排気量もどうでもいい。では、バイクの何が好きなのかと言うと、それはバイクを操ること、つまりライディングである。

バイクで大きな自由を手にしたが……

 乗り物はただの便利な移動手段で、特別興味があるという訳ではなかった私は、自由に自分の意志で遠くに行ける移動手段として、18歳でクルマの免許を取得。しかし、古い日本の価値観が染みついた昔ながらの考えを持つ両親は、「女の子に運転免許は不要」との判断から実家のクルマを運転させてもらえず、ペーパードライバーとなってしまう。

 その後、大学生になるとすぐにひとり暮らしを始めた私にクルマを運転する機会はなく、自分で所有する余裕もなかったので、教習所を卒業してから大学を卒業するまでの約4年間は一切運転をすることができなかった。そうなると、もうクルマを運転するのは恐怖である。

 操作方法もうろ覚えなら合流も怖い。車両感覚なんか掴めたものではないし、自分にはクルマを運転する才能がなかったのだと諦めるしかない状況だった。

 幸い、大学への移動手段として50ccのスクーターには乗っていたため、交通ルールはキチンと覚えていたし、自分の意志で自由に遠くまで移動できる手段への憧れは捨てきれず、私はAT限定の中型免許を取得する。そして、中古で安く売っていたヤマハ「マジェスティ」を購入したことが、私のバイクライフの始まりだった。

 ビッグスクーターは荷物もたくさん積める上に比較的ラフな服装でも乗れるため、行動範囲が一気に広がった私は、大きな自由を手にしたような気持になったことを覚えている。しかしその時点でも、やはりバイクは移動手段のひとつ。大事ではあったが「好きなこと」ではなかったとおもう。

ハマったきっかけはMotoGPライダーの一糸乱れぬコーナリング

 そんな私のバイク熱に火が付いたのは、初めて見たMotoGPライダー達の一糸乱れぬコーナリングがきっかけだった。モータースポーツの存在すら知らなかったレベルの私が、偶然ツインリンクもてぎで開催されていたMotoGP日本グランプリを見る機会に恵まれ、そこで見た水泳のシンクロ競技のような美しいコーナリングに魅了され、自分もあの美しい列に入りたいと、無知だからこそ思い描ける大きな夢を見てしまったのだ。

 そこから私は、サーキットで走るためのロードバイクを購入し「あのコーナリング」の練習をスタートさせる。そしてMotoGPで見た美しいコーナリングが、どれほどハイレベルな物かも知らずに始めたサーキット練習だったが、教習所や公道を走っているときとはまったく違うバイクの操作感に、心底楽しさを感じてしまったのだ。

 もちろん「あの列」に入ることは不可能であることは練習をはじめてすぐに気付いたが、そんなことはどうでも良かった。もっと上手くなりたい。もっとカッコよく走りたい。これが、私がバイク好きになった瞬間だったと思う。

 

ライディング上達の「近道」としてのオフロードバイク

 しかし、移動手段として公道を走っていた時とは違い、サーキットでのライディング練習にはかなりのお金と時間を要することになる。そこで私が思いついた最善の方法が「仕事にすること」と「オフロードバイクを手に入れること」だったのだ。 なぜオフロードバイクかというと、車体のほとんどがカウルに包まれているロードバイクは、転倒すると修理費がかさむことに加え、サーキットでの走行料なども高額である。オフロードバイクは、走破性を重視して作られているため丈夫なことに加え、ボディのほとんどがむき出しのため壊れる箇所も少なく、コースでの走行費用も比較的安いことが多いのだ。 私は、ロードバイクでのラインディングを比較的リーズナブルに上達させられるよう、オフロードでの練習を開始した。つまり、ロードバイクのためのオフロードだったのである。

オフロードでの走りも上手くなりたい!

 そんなオマケのような気持ちで始めたオフロードだったが、ロードの操作感とはまったく別の乗り味で、想像以上におもしろい。さらに、オフロードバイクはライディングの練習用というだけでなく、ロードバイクでは怖いと感じるような砂利道などの未舗装路も、不安感なく進むことができるなど、新たなバイクの楽しみ方を教えてくれたのだ。 そして気付いた時には「ロードのためのオフロード」ではなく「オフロードでの走りも上手くなりたい」と、バイクが好きという気持ちの一部になっていた。結局私は前述したとおり、バイクの車種ではなく操作感が好きなのだ。エンジンと2本のタイヤで走る、この乗り物を生身の私が操っているのだという爽快感は、バイク特有のものだろう。車種や排気量は別になんでもいい。どんな状況でも、どんな種類のバイクでも、操れたときの達成感が私にとっては最高なのである。

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